日本が抱える未解決のエネルギー問題へ国民の関心を向けるのに貢献する対応だ。
寿都町と神恵内村では文献調査結果がほぼまとまり、ボーリングなどで地下の構造を調べる「概要調査」移行が焦点となっている。そうした状況で4月下旬、玄海町の商工3団体が文献調査を受諾するよう求めた請願が町議会で採択された。
あとは脇山氏の決断のみとなり、経産省が調査を受け入れるよう申し入れていた。これが、当初の反対姿勢を転換するかどうかで迷っていた脇山氏の受諾判断を後押しした面はあろう。何よりも民意を尊重した脇山氏の見識を高く評価したい。
玄海町が受諾したことで、HLWの問題が北海道だけのものとなりかねない事態は避けられた。この意義も大きい。
「核のごみ」とも言われるHLWは万年単位の長期間、放射能を持ち続ける。これを人間の生活圏から隔離するには地下300メートル以深の岩盤中にトンネル網状の施設を建設し、そこに埋設するのが最も確実な方法だ。これは世界の共通認識だ。
だが、原子力に関する世論調査でもこの問題の国民理解は進んでいない。一方、玄海町には九州電力の玄海原子力発電所が立地している関係で、原子力エネルギーの利用とその後始末であるHLW問題の重要性を知悉(ちしつ)する町民が多いという。
玄海町の前向きの対応はHLW問題の解決に向けての心強い動きだ。第4、第5の文献調査地が現れるよう期待する。