手話で憩う場 奥能登に復活 就労施設 全日本ろうあ連が修繕費(2024年4月30日『中日新聞』)

 
修繕を終えたやなぎだハウスで交流を楽しむ利用者ら=能登町柳田で

修繕を終えたやなぎだハウスで交流を楽しむ利用者ら=能登町柳田で

被災の「やなぎだハウス」

 能登半島地震で被災し、壁がはがれるなどの被害を受けた能登町柳田の聴覚障害者向け就労支援施設「やなぎだハウス」の修繕が、全日本ろうあ連盟の支援で完了した。29日に施設で完工式があり、白山市に2次避難した利用者らも駆け付けて「憩いの場」の再スタートを祝った。 (新居真由香)
 やなぎだハウスは2017年、奥能登地域2市2町に暮らす聞こえない人、聞こえにくい人の交流拠点として開所。地震前は60~80代の利用者18人がゴムの袋詰めやぞうり作りなどの作業をしていた。
 地震により、鉄骨2階建ての建物は外壁に亀裂が入り、室内も天井が落ちるなど大きく損傷。自宅が倒壊するなどした利用者は白山市に2次避難した。今も6人が同市で生活を送る。奥能登地域に残った利用者は、3月からやなぎだハウス近くの公民館で週1日の作業を再開した。
 県聴覚障害者協会によると、地震の後には手話通訳者が周囲におらず、孤立した聴覚障害者が多かった。安心して過ごせる居場所の確保が必要となり、全日本ろうあ連盟に寄せられた義援金約600万円を活用して修繕した。
 完工式には県聴覚障害者協会や全日本ろうあ連盟の関係者、利用者ら約50人が参加した。5月からは施設で週3日の作業が可能となる。
 白山市に避難する穴水町緑ケ丘の酒井恵一さん(68)は「久々に仲間の元気な顔を見て安心した。やなぎだハウスは生活に欠かせない大切な場所。早く戻りたい」と話した。酒井さんは自宅が準半壊し、戻れるめどは立っていない。
 佐藤香苗施設長(62)は「家屋が被災した利用者の衣食住の場の提供が課題となっている。全員そろって作業再開することを目指し、頑張っていく」と語った。今後は2次避難者が戻ってこられるよう、やなぎだハウス横の駐車場に簡易住宅の整備を進める予定。