手話 宇都宮明香 手話通訳者全国統一試験 通訳(2024年5月1日『サンデー山口』)

【聞かせて】No.857「宇都宮うつのみや 明香あすかさん・手話通訳者全国統一試験合格国のモデル事業を経て初」
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 2023年12月に実施された「手話通訳者全国統一試験」に合格。2019年度に始まった厚生労働省「若年層の手話通訳者養成モデル事業」の講座を受けて合格した第1号だ。合格発表当日は愛媛県に帰省中で「正直驚いた。両親に直接報告できよかった」と話す。       
 若手の手話通訳者増加を目的に設置された同事業は、35歳以下が参加対象。県内では県立大で講座が開かれている。大学2年次に初心者向け「手話コミュニケーション講座」を受け、手話検定2級に合格。3年次の昨年は「手話通訳者講座」を受講して統一試験に挑んだ。どちらも単位取得につながる講座ではないため、大学が休みの日に開かれる講義に2年間通った。    
 合格と同時に県の手話通訳者としても登録された。平成生まれの登録者は初。「学びを深め、福祉の現場で役に立ちたい」と意欲を見せる。    
【プロフィル】2002年7月、愛媛県生まれの21歳。高校まで地元で過ごし、県立大へ進学。現在、社会福祉学部4年。手話サークルに所属し、学業の合間を縫って老人ホームでのアルバイトにも精を出す。社会福祉士の国家試験合格を目指して受験勉強中。
 

若年層の手話通訳者養成モデル事業(山口県立大学)の取組
一般社団法人山口県ろうあ連盟 赤井正志・徳田誠
全国手話通訳者問題研究会山口支部 伊藤利明
 
○はじまるまで
2020年度に実施された「雇用された手話通訳者の労働と健康についての実態に関する調査研究報告書」によると手話通訳者の平均年齢は54.4歳、高齢化は悪いこととは思いませんが若手が育っていないことについては問題と感じています。
若年層の手話通訳者養成モデル事業は、全国手話研修センターが厚生労働省の委託を受けて2019年度に京都の龍谷大学で講座がはじまりました。原則35歳以下の人を対象としています。社会福祉学部がある山口県立大学での開催の打診があったのは、2021年春でした。開催したいと伝え、全国手話研修センターの小出常務理事に山口県立大学の学長を訪問していただき2022年度からの開催となりました。
実施計画の作成段階に入りますと、様々な問題がありました。山口県立大学が改築中で室が空いていないので会場の調整に時間がかかり、また、募集になりますと山口市は県庁所在地ではありますが田舎で、大学は3校しかありません。
受講生が集まるか、など大きな問題を残した出発でありました。
 
○2022年度の講座
2022年度は、初心者対象の手話コミュニケーション講座を開催しました。
手話コミュニケーション講座は、全国手話検定試験2級合格を目指す講座です。
「手話通訳者等の養成カリキュラム策定事業報告書」では手話通訳受講対象者を全国手話検定試験2級合格レベルと設定してあり、全国手話検定試験2級は筆記試験もあり到達レベルは高いと感じています。講師体制は、ろう講師8名、聞こえる講師3名でした。定員20名のところ3大学で11名しか集まりませんでした。その後、若年層の社会人にも呼びかけ7名の申込があり18名で開催しました。
教材等は、全国手話研修センターからの提供があり、従来と違った内容で驚きました。まず、紙のテキストはありません。クラウドを使用した動画で進めていきます。講座の講師は、ろう講師2名・聞こえる講師1名で、「ろう講師」がメイン講師として進めていて、紙テキストもないので受講生は講師の手話に集中しています。クラウドは今後改訂される手話奉仕員養成にも活用されると聞いています。講義も原則動画配信で対応しました。
夏休みの関係で、前期と後期に分かれていますが、前期修了前の模擬試験あたりでろう講師から手話の上達が早いという声を聞くようになりました。また、全国手話検定試験2級対策として、筆記試験対策講座も実施しました。
12月全課程修了後、全国手話検定試験2級団体試験を最終的に受講者14名が受験しました。結果は、受講生の努力から全員合格でした。
〇2023年度手話コミュニケーション講座
2023年度は教材を山口県版の作成からはじめました。(1年目は、全国手話研修センター作成の教材)。大学の協力もあり募集も順調に進み、現時点大学生等30名が受講しており、昨年に比べ大幅増となりました。ろう講師も若手3名を加えました。特に今年度は、聴覚障害者の理解を深めてもらうために講義「きこえのしくみと障害」を対面講座で実施します。また、担当者が地元市の聴覚障害者協会や奉仕員養成講座の事務局を担当しており、カリキュラム等連携を図っています。
〇2023年度手話通訳者講座
2022年度の手話コミュニケーション講座を修了した14名のうち6名の申込があり、過年度に手話奉仕員養成講座を修了した1名を加え7名で開催し12月の統一試験合格を目指しています。また、担当者が県ろうあ連盟理事長であり、県ろうあ連盟や聴覚障害者情報提供施設のイベントなどに模擬通訳や交流をカリキュラムに加え聴覚障害者の理解を深める内容となっています。
 
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〇講師の感想等
・大学生は、山口出身者が少ないことがありますが、出身地に帰られてもがんばってほしいと考えています。
・全国手話研修センターで作られた指導内容がろう講師中心で進められるので、ろう講師が元気だと感じています。
・モデル事業なので、いつまで事業が続くかはわかりませんが、できる限り開催したいと考えています。