岸田首相 解散断行か、解散見送りで総裁選出馬断念か 待ち受ける二つのハードル(2024年4月18日)
通常国会の会期末が迫るなか、解散に踏み切るの
か、総裁選前の退陣に追い込まれるのか。岸田文雄首相は瀬戸際に立たされている。AERA 2024年4月22日号より。
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岸田文雄首相は4月8日から米国を「国賓待遇」として訪問した。10日のバイデン大統領との首脳会談では、軍事的台頭を続ける中国を念頭に自衛隊と米軍との連携強化を確認し、11日には連邦議会の上下両院合同会議で演説。「外交の岸田」を内外にアピールするのが狙いだ。
日本国内では、春闘で大企業を中心に大幅な賃上げが実現した。6月には、岸田首相がこだわった1人当たり計4万円の所得税、住民税の減税が国民の懐に届き始める。可処分所得が増え、消費が拡大し、長く続いたデフレ状況が転換するかもしれない。そうした経済状況を受けて、6月23日の通常国会会期末ごろには、内閣支持率を反転させたい。そのうえで、衆院解散・総選挙に踏み切り、9月の総裁選で再選、長期政権への流れを作りたい。それが岸田首相の本音だろう。
一方で、そうした流れができなければどうなるか。裏金問題の処分をめぐっては、自民党内に不満の声が渦巻く。内閣支持率も低迷し、この状況で解散・総選挙となれば、自民党議員の多くが討ち死にする。自民、公明両党が過半数を維持できずに政権交代となる可能性さえある。だから、自民党内では「岸田さんを羽交い締めしてでも解散させない」(閣僚経験者)といった本音が聞かれる。茂木幹事長もこの国会での解散には否定的だ。公明党も裏金問題で政権与党に逆風が吹き荒れる中での解散には反対している。
仮に岸田首相がこの国会で解散ができず、秋の総裁選を迎えるとすれば、自民党内では総裁選で「新しい顔」を選び、その下での解散・総選挙を求める意見が大勢を占めるだろう。岸田氏の再選の可能性はなくなる。総裁選への出馬断念に追い込まれて、みじめな「野垂れ死に」となることは明らかだ。
そうした展開を考えれば、岸田首相が今国会中の解散にこだわる理由が見えてくる。解散断行か、解散見送りで総裁選出馬断念か。切羽詰まってきた岸田首相にとって、目前のハードルは二つだ。一つ目は4月16日告示、28日投開票の衆院補欠選挙(東京15区、島根1区、長崎3区)。
自民党は東京15区と長崎3区で公認候補の擁立を見送り、「不戦敗」となった。そのため、島根1区は負けられない選挙だ。島根県は竹下登元首相や青木幹雄元官房長官の地元で「自民党王国」だ。
ただ、島根1区選出の細田博之前衆院議長は生前、旧統一教会(世界平和統一家庭連合)との密接な関係が指摘されたにもかかわらず、明確な説明を避け、批判が広がった。細田氏が会長を務めていた安倍派の裏金問題も批判された。
その細田氏の死去に伴う補選とあって、自民党は財務官僚OBを公認したが、支持者の動きは鈍い。立憲民主党は元衆院議員を擁立、共産党が自前の候補をおろして支援を決めるなど、連携が進んでいる。自民党が島根で敗退するようだと、自民党内では「岸田首相の下では総選挙は戦えない」という声が高まるだろう。
■この1、2カ月が山場
もう一つのハードルは、裏金問題を受けた政治資金規正法の改正だ。衆参両院で4月11、12両日に特別委員会が設置され、まず衆院で本格的な審議が始まる。(1)政治資金収支報告書に虚偽記載などがあった場合、会計責任者が立件されれば政治家本人も罪に問われるようにする「連座制」の導入(2)政党から幹事長らに支給されながら領収書を公開しなくてもよい「政策活動費」の制度を廃止する、などが焦点となる。
岸田首相は、この法改正で成果を上げて解散・総選挙に向けた環境作りを進めたい考えだ。そのためには、立憲民主党など野党との話し合いが不可欠となる。裏金問題で関係議員への聴取などに積極的に動かず、岸田首相との溝が深まっている茂木敏充幹事長では野党との話し合いが進まないだろう。岸田首相がそうした事情をどう打開していくのか。この1、2カ月が、岸田政権だけでなく自民党、そして日本政治の将来を決める大きな山場となる。
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