当初は「野蛮な鉄の塊」だったエッフェル塔のようになると思えば…大阪万博の〝世界一高い日傘〟も高くない(2024年4月18日『サンケイスポーツ-』-「政界地獄耳」)

報道陣に公開された木造巨大屋根「リング」

■4月18日 ギリシャオリンピア遺跡で採火された五輪の聖火がパリを目指してスタートした。パリでの夏季五輪はこれが3回目だが、聖火を迎えるのは初めてになる。セーヌ川を舞台に選手団が船で入場する7月26日の開会式当日には、ルーブル美術館前のチュイルリー公園に設ける聖火台に点火されることになる。

開会式の式典はエッフェル塔を仰ぎ見るトロカデロ広場で行われる。フランス革命100周年を記念して開かれた1889年の万国博覧会の目玉として建てられたのがエッフェル塔。その後、1900年と24年の2回のパリ五輪では多くの観光客を集めたという。今回もパリ五輪の象徴として存在を誇示するだろう。

もっとも、塔建設の話が持ち上がったとき芸術の都では「無用にして醜悪」「野蛮な鉄の塊」と画家や彫刻家、作家らを中心に猛反対の声が上がったという。文豪モーパッサンは「あのいまいましい姿を見られずに済む」と塔の完成後は逆手をとって1階のレストランで食事をしていたと伝えられる。

翻って、いま日本では来年の大阪・関西万博がやり玉に上がっている。建設資材の高騰などで会場建設費が当初の1・9倍の2350億円に膨れ上がった。トイレの整備費だけでも入札が行われた8件のうち一部落札額が2億円近くに上った。SNSなどで「税金の無駄遣い」と批判が噴出している。

350億円かけた木造巨大屋根「リング」も〝世界一高い日傘〟と悪評ふんぷんだが、時がたてばエッフェル塔の例もある。万博の象徴なら、レガシーとして保存か移設すれば「日本の技術が詰まった世界最大級の木造建造物」と将来大威張りできると、いまは思うしかない。(今村忠)