日米比首脳会談 対中抑止へ安保協力を深めよ(2024年4月14日『読売新聞』-「社説」)

 中国の、南シナ海のほぼ全域を自国領だとする主張は事実に反し、法的根拠もない。日米比3か国は安全保障協力を着実に進め、中国の危険な行動を抑止すべきだ。


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 岸田首相と米国のバイデン大統領、フィリピンのマルコス大統領がワシントンで会談した。

 3首脳は共同声明で、東・南シナ海で強引な活動を続けている中国に「深刻な懸念」を表明し、3か国の防衛当局と海上保安当局がそれぞれ共同訓練を促進することになった。海洋に関する協議の場を新設することでも合意した。

 3か国による首脳会談は今回が初めてだ。南シナ海の領有権を巡って中国と争っているフィリピンを日米が支えることが目的だ。

 中国は、南シナ海南沙諸島の軍事拠点化を進めている。比軍が駐留しているアユンギン礁周辺では昨年以降、中国海警局の船がフィリピン船に体当たりしたり、放水を繰り返したりしている。比側には負傷者も出たという。

 中国海警船の挑発的な振る舞いは無謀に過ぎる。一歩間違えれば、軍事衝突につながりかねない。

 そもそも、南シナ海に対する中国の領有権の主張は、2016年の仲裁裁判所の判決によって全面的に退けられている。国際機関の判決を無視し、海洋の秩序を乱す中国の活動は看過できない。

 共同声明ではまた、尖閣諸島について、中国の一方的な現状変更の試みに強い反対を表明した。日比とそれぞれ同盟関係にある米国の、両国に対する「揺るぎない同盟上の関与」も盛り込まれた。

 中国の覇権的な活動が、日米比3か国の関係強化をもたらしたと言えるだろう。3か国で訓練を重ね、対処力を高めたい。

 この会談に先立ち、首相は米議会の上下両院合同会議で「未来に向けて~我々のグローバル・パートナーシップ」と題し、英語で約35分間演説した。

 首相は、日米両国で協力して国際秩序を守る決意を示し、「米国は独りではない。日本は米国と共にある」と述べた。

 防衛予算を積み増して防衛力の強化に取り組んでいることや、米国にとって日本が世界最大の直接投資国であり、米国内の雇用を創出していることにも言及した。

 今年11月の米大統領選では、トランプ前大統領が返り咲く可能性も指摘されている。首相としては、米国の安全保障や経済に日本がいかに貢献しているかを強調し、民主、共和両党に党派を超えた理解を求める機会となった。