さくら道ラン 最後の力走に声援を(2024年4月13日『中日新聞』-「社説」)

 

 

 開始から30年。名古屋市から金沢市までを走り抜く「さくら道国際ネイチャーラン」が、今年で幕を閉じる。国内有数の名物レースだっただけに残念だ。最後となる20日は、距離を短縮した「ハーフ開催」だが、ランナー100人の力走に大きな声援を送りたい。
 大会は1994年にスタート。かつて名古屋と金沢を結んだ路線バスの車掌で「太平洋と日本海を桜の木でつなごう」と苗木約2千本を自費で植えた故佐藤良二さんの遺志を受け継ぐ趣旨だ。
 昨年の大会では、参加者は早朝の名古屋城から順次出発=写真。主に国道156号経由で岐阜県内を北上し、富山県内を経て、ゴールの金沢・兼六園を目指した。
 約250キロに及ぶコースには休憩所が50カ所近くあり、ボランティアら約700人がランナーに飲食物を提供。気力・体力の限界に挑むランナーと、励ます人たちの姿には、胸を打つものがあった。
 幸い、これまで大きな事故はなかったが、ボランティアは高齢化やコロナ禍による中止の影響などで減少。昼夜を分かたず走るランナーの安全確保が難しくなったことなどから、実行委員会が「継続は困難」と終了を決めた。
 最後となる今回は、名古屋城20日午前5時から順次出発。本来なら金沢までを36時間以内に走る規定だが、佐藤さんの故郷・岐阜県郡上市白鳥町をゴールとして、午後7時過ぎまでの14時間以内に着くルールで行う。
 近年、国内でも超長距離のレースは増えたが、その先駆けのような大会でもあっただろう。長きにわたり開催を支えてきた実行委員会、多くのボランティアたちの労を多としたい。泉下の佐藤さんも喝采を送っているに違いない。
 同じ中部地方ながら「近くて遠い」ようでも、「遠くて近い」ようでもある東海と北陸。折しも、北陸新幹線敦賀駅福井県)延伸でJR特急「しらさぎ」は名古屋-金沢間から名古屋-敦賀間に短縮されたが、「さくら道」は、国などが提唱する東海から北陸にかけての観光ルート「昇龍道」とも重なる。今後も新たなつながりを見つけ、絆を強めていきたい。