コロナ禍以前にも増して、現在、京都市内には国内外から多くの観光客が押し寄せている。とくに市内中心部にある観光名所「祇園」周辺の歩道は大勢の観光客でごった返しており、平日でも歩道から人が溢れかえるほどの混雑ぶりだ。
【動画】「祇園の惨状」の動画をまとめて見る…掃除する地域住民の姿も
「祇園の惨状」 そうつぶやき、四条通と東山通が交差する祇園の象徴「八坂神社」の前から、「ぎ園甲部歌舞練場正門」がある花見小路に至る四条通の様子を捉えた動画をX(旧Twitter)に投稿した、釜玉うどん(@fBJZQlO8fLn5EsT)さん。 そこに映っていたのは、風情ある美しい「祇園」とは思えないほど大量のゴミがあちこちに散乱した無惨な光景……。
観光立国が誇る観光名所「祇園」の惨状
「これ京都なんですか?」 「どこのスラム街ですか?」 「場所を綺麗に保つ気のないやつは、街に対するリスペクトも人に対するリスペクトもないと思う。最悪だな」 「進学校にアホが大量に来た感じ。しかしどうにもできない苛立ちと無力感」 「小銭欲しさの観光立国で、自ら観光資源を失う」 「観光客は年間1000万人までとかに規制してくれ」 「捨てたやつは素戔嗚尊(すさのをのみこと)、櫛稲田姫命、八柱御子神の怒りをかってバチあたれ」 あまりの惨状に、コメントのなかには、「シンガポールみたいに法律で取り締まるようにした方がいい」という声も見受けられた。
ここは日本、日本のルールを守って
「動画を撮影したのは、ソメイヨシノが開花した2024年4月6日の早朝、午前6時50分過ぎです。コロナ禍でもゴミ問題はひどかったですが、ここ1年くらい、桜・紅葉の季節のハイシーズン中はさらに酷くなったと実感しています」 そう語る釜玉うどんさんは、京都市営バスと寺社仏閣巡りが大好きな京都市民。
京都市民から「八坂さん」「祇園さん」の名で親しまれている「八坂神社」は、平安京遷都以前より鎮座する古社。そして花見小路は、紅殻格子や犬矢来に彩られたお茶屋が続く「花街」であり、世界に誇る「祇園」を象徴するエリアだ。 「ゴミが散らばっている状態を見た時は残念な気持ちになりました。京都には世界中いろいろな国から人が集まります。『ゴミは、処分することで収入を得ている誰かがいるもの。掃除をする人の仕事を奪ってはならない』と考える国の方もいると思います。
しかしながらここは日本ですので、日本のルールをしっかりと守って頂きたいです。本来であれば、食べ歩き目的の飲食物を販売した業者が、何らかの責任を負う必要があると思いますが、購入した店舗前で飲食してゴミを捨てるというのは難しいと思います。今よりもっと宿泊税を上げ、その分でゴミ箱の設置数を増やす、回収費用に充てる、などの対策法を考える必要があると思います」(釜玉うどんさん)
寄せられた多くのコメントのなかには、「京都は観光しかないくせに」「観光客で潤ってるならマイナスも引き受けなきゃ」といった厳しい声も見受けられた。 しかし、「京都市内に観光客が来ようが、こちとら一円も儲からんのよ」と釜玉うどんさんも返答していたように、大半の京都市民は「観光業」とは無縁。京都市内総生産のうち「観光業」は推計約10%(京都市のHPより)。
観光客がもたらす「宿泊税」の割合も、京都市公表の市税収入の内訳(令和元年)全体のわずか1.4%にすぎない。 むしろ京都は、京セラ株式会社、任天堂株式会社、オムロン株式会社、佐川急便株式会社、株式会社村田製作所、株式会社ワコールホールディングス、宝酒造株式会社、グンゼ株式会社など、誰もが知る大企業を有する商業都市だ。創業1000年以上を誇る老舗店もあり、市民は京都を「お商売の街」として認識している。
想定を上回る数の「観光客」と「ゴミ」
釜玉うどんさんが今回投稿した動画に対して、「カラスが荒らしたゴミです。観光客のせいじゃない」といった声も見受けられた。だが、歩道に溢れ出す大量のゴミは、持ち帰り用の飲料のカップや酒の缶、割り箸や弁当容器など、明らかに「観光客」が出したゴミだ。
また、ゴミ箱の設置数を増やせという声もあったが、八坂神社から祇園四条駅に至る約1キロの歩道には、左右の歩道にそれぞれ4~5基ずつ、数箇所にわたりゴミ箱が設置されている。つまり、通常の観光客の数を想定した数が設置されているにも関わらず、設置されたゴミ箱から大量のゴミが溢れ出しているということは、訪れる観光客のマナー低下に加え、京都市内中心部には今、想定を上回る数の観光客が集中している、ということになる。もはや観光客の数もゴミの量も市のキャパシティをはるかに超えており、明らかにオーバーツーリズム状態だと推察できる。
現在、大量に排出され散乱した祇園のゴミは、釜玉うどんさんの投稿した動画「祇園の惨状 1」にも映っているが、地域住民の方々が「ボランティア」で清掃し、自費でゴミ出しを行なっている。
大量の観光客が来ても「京都市」は儲からない!?
祇園に限らず、人気の観光エリア「嵐山」の公衆トイレなども現在、観光客が排出したドリンク容器やオムツなどのゴミが大量に散乱するなど、ひどいあり様だという。 驚きべきことに、溢れ返るゴミの量から推察されるすさまじい数の観光客が続々と入洛しているにも関わらず、京都市は相変わらず財政難が続いている。 そもそも京都市は学生や高齢者が多く、納税義務者の割合が少ない。さらに、近年開店した観光客向けの飲食店や宿泊施設の多くは、中国などの海外や東京などの京都以外の資本。
また、インバウンド拡大による宿泊施設の建設ラッシュ、外国人による不動産取得急増による市内地価や市税の高騰などで、子育て世代を中心に大量の人口が転出。そのため、市民からの税収が低下し続けていることなど、京都市の赤字財政の背景には、長く続いた西脇隆俊前市長在任時の失策による多くの要因があげられる。
令和6年度から新たに松井孝治京都市長が就任し、オーバーツーリズム緩和に向け、土日祝日のみ運行される「観光特急バス」の導入が発表された。だがこれでは平日の混雑は解消されず、観光による税収の増加も期待できない。
2025年、今の倍以上のインバウンド客が来集
「今来てる外国人観光客の大半は富裕層ではなく、金は無いが円安の恩恵を受けている連中。京都に来ても銭を落とさない」というコメントも寄せられていたが、実際、京都市内を訪れる訪日客の多くは、タクシーやレストラン、高額な土産物には目もくれず、公共交通機関に大型のスーツケースを複数持ち込み、海外資本の施設に宿泊し、海外資本店のテイクアウト商品を食べ、ディスカウントショップで海外製商品を買い漁っている。
円安を武器に政府は、「さらなる高みを目指す」として、2025年度までに、累計2500万人を突破した2023年度の倍以上となる6000万人ものインバウンド客を目標にしている。増え続ける観光客の数に伴う税収増加も混雑緩和の対策も見込めないまま、今の倍以上もの大量の訪日客が押し寄せる未来に、穏やかで美しい京都は存在しない。 (まいどなニュース/Lmaga.jpニュース特約・はやかわ かな)
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