<海外便り>日系人排斥の歴史語り継ぐ97歳の不安 アメリカ・ワシントン(2024年4月9日『東京新聞』)

 
 戦時中、米国で「敵性外国人」と見なされ、強制収容所に送り込まれた日系米国人。その歴史を後世に伝えるイベントが6日、日系人記念碑が立つワシントン中心部の広場で開かれた。
 「米国は二度と同じ過ちをしてはいけない」。収容所での苦難を経験した日系2世のマリー・カミムラさん(97)に思いを聞くと、よどみのない口調で返ってきた。この日は娘のキミさん(61)、孫娘のキャロリンさん(26)とマイクを握り、世代を超えて語り継ぐことの大切さを訴えた。
6日、米ワシントンで、娘のキミさん(左)と孫のキャロリンさん(右)と一緒に日系人排斥の歴史を語り継ぐ重要性を語るマリーさん

6日、米ワシントンで、娘のキミさん(左)と孫のキャロリンさん(右)と一緒に日系人排斥の歴史を語り継ぐ重要性を語るマリーさん

 取材中、広場のモニュメントに刻まれた日系人たちの願いを読んでいて、気になる一文を見つけた。「どのグループ(人種)にも、二度と同じことを起こしてはならないという重大な教訓として残さなければいけない」―。日系初の米連邦議員を務めたダニエル・イノウエ氏(故人)のメッセージだった。
 今の米国社会は移民に排他的な風潮が台頭している。マリーさんに尋ねると「私の立場で意見できない」と回答を拒まれたが、「一つ言えることがあるとすれば」と言葉をつないだ。「私は次世代の日系人の将来が不安です」(鈴木龍司、写真も)