国会の憲法審査会 原案作成に着手する時だ(2024年4月8日『産経新聞』-「主張」)

 
今国会初開催された衆院憲法審査会=4日午前、国会(春名中撮影)

 衆院憲法審査会が4日、今国会で初めて開かれた。だが行ったのは幹事選任の手続きだけで、費やした時間は数分である。参院憲法審に至っては一度も開かれていない。

いつまで蝸牛(カタツムリ)のような歩みをするのか。

 条文案の起草機関を設け、改憲原案の策定に速やかに着手すべきだ。岸田文雄首相は9月末までの自民党総裁任期中の憲法改正を目指している。そのためには遅くとも国会終盤には発議する必要がある。

 そもそも初会合が遅すぎた。立憲民主党が自民の派閥パーティー収入不記載事件と関連付けて、還流資金が不記載だった議員が委員に含まれていることを問題視し、開催を拒んできた。このため衆院憲法審の会合は4月にずれ込んだ。昨年の通常国会で初めて開いたのは3月2日だった。

 国の根幹である憲法を議論する場に、関係のない不記載事件を持ち出し、開催を遅らせたことは、不見識も甚だしい。議論を避けるのは、国会議員として怠慢のそしりは免れまい。

 衆院憲法審を会期末まで毎週開催しても、11回しか開けない。定例日以外も開催するなど柔軟に運営し、原案の策定を精力的に行ってもらいたい。

 自民は立民による事実上の審議拒否を許してはならない。立民の抵抗に引きずられるのではなく、政権与党として議論を前に進めていく責任がある。今後、立民が再び審議を拒めば、同党抜きで開催すればよい。

 緊急事態条項の新設は急務だ。南海トラフ巨大地震や首都直下地震などの大災害やテロはいつ発生するか分からない。日本有事に直結する台湾有事も懸念される。早急な改正が求められる。

 自民、公明党日本維新の会、国民民主党などは、国会議員の任期延長が必要との認識で一致しているが、それだけでは足りない。大災害や有事の際、内閣に期間を区切って権限を集め国民を救うための仕組みが必要である。だが公明は緊急政令や緊急財政処分の規定に慎重だ。翻意してほしい。

 憲法改正に国防規定がないことも深刻に受け止め、軍の保持を認めるべきである。自民や維新は第9条への自衛隊明記を主張している。これだけでは本来不十分だが、第一段階の改正としては意義がある。