創設のきっかけは2010年のハイチ地震だった。深刻な状況を…(2024年4月7日『東京新聞』^「筆洗」)

どのような危機にも駆けつけて食事を用意する人々 « American View

 

 創設のきっかけは2010年のハイチ地震だった。深刻な状況を知った米国の有名シェフ、ホセ・アンドレスさんが現地に入った。被災地、戦地で食事を提供する国際NGOワールド・セントラル・キッチン」(WCK)の始まりという。「空腹な人がいれば、どこにでもいく」。ホセさんの言葉がうれしい

▼「ホットフード」が合言葉らしい。被災地での食事といえば、味は二の次になりやすいが、温かい料理の提供を心がけているそうだ。現地に厨房(ちゅうぼう)をこしらえ、そこで調理する

▼ハリケーンの米国、オーストラリアの森林火災、トルコの地震。その味が困難の中にあった人々の体と心を温めてきた。日本でも新型コロナウイルスの感染拡大で横浜港に足止めとなった「ダイヤモンド・プリンセス号」の乗客に食事を出した

イスラエルの侵攻で人道危機にあるパレスチナ自治区ガザでの活動中に悲劇が起きた。WCKの車列がイスラエル軍の攻撃を受け、スタッフ7人が死亡した

イスラエル軍は「誤爆」と説明するが、つらい人々のおなかをいっぱいにしたいと願い、奔走してきたスタッフの死がくやしい

▼事件を受け、米国はイスラエルに民間人保護や人道状況の改善を求め、応じなければ、イスラエル支援を見直すと警告した。ガザ側の死者は既に3万3千人を超えた。遅すぎる米国の圧力に冷め切った「料理」を思う。