自転車運転の罰則強化 日頃から安全意識高めよう(2024年12月1日『河北新報』-「社説」)
手軽で環境にも優しい自転車だが、乗り方を誤ると周囲に危険を及ぼす。特に走行中に携帯電話を使う「ながら運転」や、飲酒後の運転は重大事故を招きかねない。
利用者一人一人が法の趣旨を理解し、安全意識を向上することが求められる。自転車の危険な行為に対する罰則を強化した改正道交法が先月、施行された。
ながら運転は、走行中にスマートフォンなどを手に持って通話したり、画面を注視したりする行為だ。改正法により、有罪となると6月以下の懲役か10万円以下の罰金。事故などを起こせば1年以下の懲役または30万円以下の罰金が科される。
呼気にアルコールが0・15ミリグラム以上含まれた状態で走行する酒気帯び運転にも罰則が新設され、3年以下の懲役または50万円以下の罰金となる。酒気帯びと知りながら自転車に同乗すること、自転車や酒類を提供することも罰則対象となった。
警察庁の統計によると、自転車が第一当事者となった交通事故で、携帯電話を使用していたケースは年々増加傾向にあり、2023年は全国で139件に上った。このうち12件は通話目的の使用で、残り127件が画像を目的とする使用。大半がスマホの画面を注視するなどの行為によって事故が起きている。
今年上半期(1~6月)には、自転車のながら運転で発生した死亡・重傷事故が18件を数えた。前年同期の8件から約2・3倍に増えており、統計が残る07年以降で最も多くなった。
本人は一瞬しかスマホを見ていないつもりでも危険は大きいことを認識しなければならない。一般的にスマホの画面に視線を落とし、再び周囲を見るまでに2秒程度かかるという。自転車のスピードが仮に時速約15キロだとすると、この間に進む距離は8~9メートル。周囲の状況に気付けず、場合によっては歩行者をはねてしまう可能性もある。
飲酒によって交通事故が重大化しやすいこともデータが裏付けている。23年までの10年間に起きた自転車を第一当事者とする事故を累計すると、飲酒なしの場合の死亡・重傷事故率は15・9%だったのに対し、酒気帯びは29・5%と約1・9倍に上った。
自転車の違反行為を巡っては、26年春ごろをめどに交通反則切符(青切符)を交付する制度が導入される。信号無視や一時不停止、傘差し運転なども摘発対象となる。昨年4月にはヘルメットの着用も努力義務となった。
交通事故全体に占める自転車事故の割合が年々増加傾向にあることを考えれば、さまざまな規制が設けられるのは当然の流れだろう。ちょっとした買い物や通勤・通学時に利用する場合も家族で互いに注意を呼びかけるなど、日頃から危険の芽を摘み取ることを心がけたい。
ルールを守る自転車(2024年12月1日『山陽新聞』-「滴一滴」)
かつて「ながら族」という言葉がはやった。ラジオや音楽を聴きながら勉強する若者のことを言った。いい顔をせず、小言を言う親に、この方がはかどるからと反論した人も多かろう
▼今やながらの主役はスマートフォンである。片手で持ちながらご飯を食べる、テレビを見る、家事をする。大人も子どもも、見事に操作する
▼家の中であれば、それほど大きな危険はなさそうだが、自転車で走行中となると話は別だ。「ながら運転」に罰則を新設した改正道交法が施行されて1カ月がたつ。事故を起こせば、1年以下の懲役か30万円以下の罰金だ
▼岡山県内では、手に持った携帯電話の画面を見ながら運転した疑いで男性1人が摘発された。これが法施行後、初の摘発事例だと先の本紙記事にあった。本人は周りが見えているつもりでも、歩行者はびくびく、落ち着かない
▼改正法では自転車の酒気帯び運転に関する罰則も追加され、こちらも摘発された人がいる。すぐそこまでだから、タクシー代を浮かせたいからと都合のよい解釈をしてはならぬ
▼きょうから師走。日の入りが早く、とりわけ視界が悪くなる薄暮の時間帯に事故は起こりやすい。きちんとライトをつけ、信号無視をせず、スマホを使わない運転を心がけたい。何かと気ぜわしくなるが、ルールを守り“ながら”が気持ちいい。
自転車の罰則強化/「自分は大丈夫」が事故招く(2024年11月23日『福島民友新聞』-「社説」)
違反すれば罰せられるからではなく、事故を防ぐために正しい自転車の利用を心がけたい。
自転車走行中の携帯電話使用(ながら運転)と酒気帯び運転に罰則を新設した改正道交法が施行された。有罪となった場合は、ながら運転は6月以下の懲役か10万円以下の罰金で、事故を起こすなどした場合はそれより重くなる。酒気帯び運転は、3年以下の懲役か50万円以下の罰金となる。
改正の背景にあるのは、自転車が絡む事故で、自転車側に何らかの違反があるケースが全国で7割を超えていることだ。県警によると、本県でも半数超のケースで違反がある。
自転車運転中の携帯電話使用については、これまでも都道府県ごとに規則などで禁止されており、本県でも県道路交通規則で5万円以下の罰金となっていた。酒気帯び運転は道交法で禁じられていたが、自動車の場合と異なり、罰則がなかった。自転車は使い方を誤れば、自分や誰かを傷つけてしまうことがある。ルールを知り、守ることで事故の恐れを小さくすることが重要だ。
ながら運転は、スマートフォンの画面などに注意が向いてしまうため、周囲の危険に気付くのがどうしても遅くなる。酒気帯び運転は、判断力が低下し事故を起こしやすくなる。また身を守るのも遅れるためけがにつながりやすく、重大な事故となる恐れが高まる。
県警で飲酒運転の取り締まりなどに当たってきた担当者によると、初めて自動車の酒気帯び運転などをして、警察に発見されることはまれだ。摘発されず、事故にも遭わないことで、何度も繰り返すようになってしまっていることがあるという。これは自転車でも同じことが考えられるだろう。
「自分は大丈夫」「これまで事故にならなかった」という慢心や過信は自分だけでなく、他の人の命すら奪いかねない。事故を起こしてから後悔しても、取り返しがつかないことを肝に銘じたい。
県警によると、県内では施行後の1週間で、ながら運転1件、酒気帯び運転で5件の摘発があった。これから年末にかけては、忘年会などで飲酒の機会が増える人もいるだろう。家族や職場などで、ながら運転や酒気帯び運転をしないよう呼びかけることで、新たなルールを一人一人に浸透させていくことが重要だ。
酒を提供する飲食店などでは、自動車での来店者への確認が広まりつつある。自転車での来店者についても、ながら運転禁止を含めて注意を促してほしい。
自転車罰則強化 危険な運転なくす契機に(2024年11月21日『西日本新聞』-「社説」)
自転車は運転ルールを守らなければ、人を死傷させる凶器になる。安全運転の意識を高めるきっかけにしたい。
法律上、自転車は軽車両で車の一種である。車の運転手と同じように、歩行者を守る注意義務を負う。
スマホで通話したり、画面を触ったりして自転車を運転すると周囲への注意が散漫になり、非常に危険だ。
改正道交法は、6月以下の懲役または10万円以下の罰金を科す。事故を起こすなど、悪質な場合は1年以下の懲役か30万円以下の罰金となる。
酒気帯び運転も罰則対象になった。呼気1リットル当たり0・15ミリグラム以上のアルコール分が検出されれば3年以下の懲役または50万円以下の罰金だ。
酒を飲んで自転車に乗れば判断能力が低下し、正常な運転はできない。歩行者や車との事故の恐れが増す。
これまでは酩酊(めいてい)状態の酒酔い運転だけが罰則の対象だった。飲酒運転すると知りながら酒類を提供した人にも懲役や罰金を科す。車の飲酒運転と同じと受け止めるべきだ。
警察庁によると、2023年の自転車関連の事故は約7万2千件で、前年より2千件以上増えた。全交通事故の2割を超える。
自転車が加害者で、歩行者が死亡か重傷になった事故は358件に上った。ながら運転が原因の事故は、14年の9件から26件に急増している。
事故の4割近くは歩道で起き、被害に遭った歩行者の過半数は65歳以上だった。高齢の歩行者への目配りを一層心がけたい。
事故を減らすため、罰則の強化はやむを得まい。
電動アシスト自転車の普及もあり、幅広い年齢の人が日常生活に自転車を使う。
だが、基本的なルールを認識している人はどれだけいるだろうか。車道の左側通行が原則で、歩道を走るのは例外だ。暗くなればライトを点灯させなくてはならない。
イヤホンやヘッドホンをして周りの音が聞こえない状態で運転する人、傘を差して運転する人をよく見かける。これも違反に当たる。
昨年4月から自転車に乗る全ての人にヘルメットの着用が努力義務となった。1年半が経過しても定着には遠く及ばない。
自動車運転と違い、自転車は講習の機会が少ない。警察や自治体、学校、事業者が協力して啓発を強化したい。車道の自転車専用レーンの整備も必要だ。
加害者にも被害者にもならないように、最低限のルールとマナーを身に付けよう。
(2024年11月14日『新潟日報』-「日報抄」)
▼その中に大八車で人を死なせると死罪という規定がある。けがをさせただけでも厳罰が下った。大八車を2人で引いて事故を起こした場合、けが人側にいた引き手は島流し。反対側の引き手は江戸などから追放された。さらに荷主や引き手の家主も罰金である(笛吹明生「大江戸とんでも法律集」)
▼荷車の事故については「往来の人をよけ申さずわがままに引き通り候」と書かれた記録も残っている。周囲に注意を払わず、自分勝手な振る舞いが事故の原因になったと言いたかったようだ
▼今月、改正道路交通法が施行された。自転車走行中の携帯電話使用、いわゆる「ながら運転」と酒気帯び運転に対し、懲役と罰金の罰則が新たに設けられた。ながら運転の事故は2022年までの5年間、それ以前の5年間より5割も増えた
▼ながら運転での死亡・重傷者の7割以上が30歳未満という。動画や交流サイト(SNS)など画面を見詰めながらの運転は、自分も他人も傷つける恐れが大きい
▼酒気帯び運転では、当人だけでなく酒の提供者や同乗者にも罰則がある。大八車の荷主や家主を思い浮かべる。自転車は環境にも健康にもいい乗り物だ。江戸時代の記録にある「わがまま」に陥らぬよう戒めながら、ペダルを踏みたい。
自転車罰則強化 責任持って安全運転を(2024年11月10日『秋田魁新報』-「社説」)
今回の法改正を機に、自転車も車両であることをより意識し、法令順守と安全運転を徹底することが求められる。ルールを守らない運転は、歩行者を傷つけかねず、自らの命を危険にさらすことになる。
ながら運転は、走行中にスマホなどを手に持ち、通話したり画面を注視したりする行為のこと。停車中は対象外。有罪になると6月以下の懲役か10万円以下の罰金、事故を起こすなど交通に危険を生じさせると1年以下の懲役か30万円以下の罰金となる。
県警が今年、運転中のスマホなどの使用に関して指導警告した件数は241件(9月末時点)に上り、昨年1年間の149件を既に超えている。全国では今年上半期だけで、ながら運転による死亡・重傷事故が18件発生している。
運転中にスマホの小さな画面を気にしていると、周囲に注意が及ばなくなり、事故につながる可能性が高まる。自転車は免許なしで気軽に利用できる便利な乗り物だが、相手や自分を傷つける恐れがあることを認識するべきだ。
酒気帯び運転は呼気1リットル当たりにアルコールが0・15ミリグラム以上含まれる状態で、3年以下の懲役か50万円以下の罰金となる。自動車と同様に、飲酒運転を知りながらの酒類提供、自転車提供、同乗にも罰則が適用される。
アルコール濃度に関係なく正常な運転ができない状態を指す酒酔い運転には既に罰則があり、5年以下の懲役か100万円以下の罰金。飲酒運転の危険性は言うまでもなく、自転車も「飲んだら乗るな」を徹底しなければならない。
自転車の交通違反については、5月成立の改正道交法で、16歳以上に反則金納付を通告できる交通反則切符(青切符)制度の導入も決まり、2年以内に施行されることになった。信号無視や一時不停止、右側通行などが取り締まりの対象となる。
県内では今年、9月末までに自転車乗車中の事故で3人が死亡、93人が重軽傷を負った。このうち約3割には安全不確認や一時不停止といった違反があった。
昨年4月から努力義務となったヘルメットの本県の着用率(今年7月調査)は10・0%と伸び悩んでいる。ヘルメットの重要性が浸透しているとは言い難く、引き続き着用を呼びかけていきたい。
警察や行政には、自転車の交通ルールや今回の法改正の内容周知に一層力を入れてもらいたい。運転にはこれまで以上に重い責任が伴うことを浸透させていく必要がある。
通勤や通学で使ったり、趣味で楽しんだりする人も多いだろう。気軽な乗り物だが、危険性があることを忘れてはならない。ルールをしっかり守り、自転車を安全に運転する意識を高めたい。
自転車走行中の携帯電話使用(ながら運転)や酒気帯び運転に罰則を新設した改正道交法が今月、施行された。
ながら運転は、走行中に携帯電話やスマートフォンなどを手に持って通話したり、画面を注視したりする行為を指す。自転車に取り付けたスマホの画面を注視することも、ながら運転に当たる。ただし、停車中は該当しない。
ながら運転はこれまで県の公安委員会規則で禁止され、違反した場合は「5万円以下の罰金」だった。これが今月施行の改正道交法で「6月以下の懲役または10万円以下の罰金」に厳罰化された。
事故を起こすなど実際に交通の危険を生じさせた場合はより重く、「1年以下の懲役または30万円以下の罰金」が科される。
厳罰化の理由は、ながら運転による事故の増加だ。
警察庁によると、2018~22年の5年間に全国で起きたながら運転の事故は454件で、その前の5年間より54%増えた。10代を中心に死亡したり、重傷を負ったりした人もいる。
スマホのゲームや動画などの普及が要因の一つと考えられる。
自転車に乗るときはスマホをしまう。使う必要があるなら、安全な場所に停車させてからにする。こうしたことを徹底したい。
飲酒に絡む罰則も厳しくなった。これまでは正常な運転ができない状態の酒酔い運転だけが処罰対象だったが、酒気帯び運転も対象となった。「3年以下の懲役または50万円以下の罰金」だ。
飲んだら乗るな、乗るなら飲むな。自転車も乗用車と同じと考えなければならない。自転車で来た客に安易に酒を出さないよう、店の側も注意が必要だ。
県警や県、市町村は厳罰化について周知に努めてもらいたい。
県内では23年、自転車事故が347件発生し、5人が死亡、333人がけがをしている。亡くなった5人のうち4人は70代だった。
本県で特に問題となっているのは、ヘルメットをかぶる人が少ないことだ。着用は23年4月に努力義務化されたが、着用率は23年が2・4%で全国最下位、24年は8・0%で44位だった。
23年に亡くなった5人のうち4人は着用していなかった。
自転車は環境に優しく、健康にも良い乗り物だ。自分の身を守るためにも、また誰かを傷つけないためにも、ルールに従った正しい乗り方を確認したい。
自転車罰則強化 安全運転の意識高めて(2024年11月8日『北海道新聞』-「社説」)
自転車は道交法上はあくまでも軽車両で、車の一種である。
自転車利用者も車の運転手同様に歩行者を守る注意義務を負っている。安全運転の意識を高め、交通法規を守り緊張感を持ってハンドルを握ってほしい。
警察や自治体は新ルールを丁寧に周知しなければならない。併せて、自転車の通行を含む安全な交通体系全体の整備にも知恵を絞りたい。
自転車のながら運転はこれまで5万円以下の罰金だった。それが6カ月以下の懲役または10万円以下の罰金と規定された。事故を起こせば1年以下の懲役または30万円以下の罰金である。大幅な厳罰化と言える。
背景に事故の増加がある。2022年までの5年間に全国で起きたながら運転の自転車事故は、その前の5年間より50%以上増え約450件となった。
スマホで通話したり画面を注視したりしながら運転するのが危険なのは言うまでもない。
自転車の飲酒運転でこれまで罰せられてきたのは深酔い状態の酒酔い運転に限られ、酒気帯びは対象外だった。
だが自転車も車と同じく酒気帯び運転の死亡・重傷事故率は飲酒していない場合より大きく高まる。3年以下の懲役または50万円以下の罰金となった。
施行初日には札幌を含む各地で酒気帯びが摘発された。
多少飲んでも自転車なら大丈夫と甘く考える人が多いのではないか。飲んだら乗らないを徹底すべきだ。警察は利用者の意識改革に努めてもらいたい。
飲酒運転すると知りつつ酒を提供した側も罰せられる。店や周囲は注意を払う必要がある。
しかし、そもそも車道の左側通行が原則で歩道利用は例外―といった自転車の基本ルールは浸透しているだろうか。交通安全教育の拡充が必須だろう。
自転車は健康に良く環境に優しい。誰もが安心安全に利用できるよう、専用レーンなどの拡充も急がねばならない。
歩行者、自転車、自動車それぞれが道路空間を気持ちよく共有できるまちづくりを国全体で考えていきたい。
自転車の運転 危険性を十分に知って(2024年11月8日『東京新聞』-「社説」)
自転車の運転中にスマートフォン等を使う「ながら運転」や酒気帯び運転に対する罰則が強化された改正道路交通法が施行された。自転車は法律上「軽車両」。歩行者と衝突すれば死亡させることもある。法律や危険性を十分に知り安全な利用を心がけたい。
スマホで通話したり、画面を注視したりしながら自転車を運転すれば、周囲の交通状況が分からなくなり危険だ。改正法は、違反には6カ月以下の懲役か10万円以下の罰金、実際に交通の危険を生じさせると1年以下の懲役か30万円以下の罰金を科す。
警察庁などによると、2023年の自転車関連の死亡・重傷事故は7461件に上る。「ながら運転」による事故は139件で画像を見る目的使用が大半を占め増加傾向にある。歩行者が死亡・重傷に至った事故では、自転車運転者の半数近くが25歳未満、歩行者の過半数が65歳以上だった。
自転車が相手を傷つける凶器になることを考えれば、ながら運転や酒気帯び運転に罰則を伴う規制を強化することはやむを得まい。改正法を安全運転への意識改革につなげるべきだ。
電動キックボードなど新しい交通手段も増え、交通ルールは複雑化している。安全に安心して自転車を利用するためにも最新の交通ルールを確認しておきたい。
そもそも道交法上の運転ルールが十分に周知されているとは言い難い。自転車の利用には(1)車道左側通行(2)信号を守る(3)夜間はライト点灯(4)飲酒運転禁止(5)ヘルメット着用-との安全5原則がある。政府は改正法と併せ、こうした知識の周知も徹底すべきだ。
自転車で歩行者を死亡させた事故では、高額な賠償命令が出た事例もあり、相手の損害を補償する自転車保険の普及も必要だ。業務に自転車を使う事業者は保険に加入することはもちろん、自転車販売店でも顧客に保険加入を積極的に勧めてほしい。
改正法は施行されたが、スマホで会話しながら自転車を運転する若者の姿はみられた
「自転車も立派な車両。飲んだら乗るんじゃねえよ」。警視庁の啓発イベントで9月、交通安全広報大使のお笑いコンビ「ハリセンボン」の近藤春菜さんが訴えた。「乗るならスマホ見てんじゃねえよ」と付け加えることもできる。
改正道交法が1日、施行された。自転車走行中の携帯電話使用(ながら運転)と酒気帯び運転に罰則が新設された。
ながら運転は6月以下の懲役か10万円以下の罰金、事故を起こした場合などは1年以下の懲役か30万円以下の罰金となる。自転車のながら運転による死亡・重傷事故は今年上半期、18件発生し、過去最多だった。
過去5年間のながら運転での死亡・重傷者は、30代以下で86・2%を占める。ほとんどは画面を注視しながらの事故だ。
酒気帯び運転は3年以下の懲役か50万円以下の罰金となる。酒気帯び運転と知りつつの酒類提供、自転車提供、同乗も罰則の対象となる。正常な運転ができない状態の「酒酔い運転」にはすでに罰則があり、5年以下の懲役か100万円以下の罰金だ。「自転車ぐらい、お目こぼしを」といった身勝手な甘えは通用しない。
厳罰化は、運転者の意識改革を促し、重大事故から守るためのものだ。自動車の飲酒運転では悲惨な事故が多発したことから厳罰化が繰り返され、平成12年に1276件だった死亡事故の件数が、令和5年には112件と10分の1以下に減少した。自転車運転にも、同様の効果を期待したい。
そもそも道交法上、軽車両と位置づけられる自転車運転の基本ルールは周知されているか。自転車は車道の左側通行が原則で、歩道を通行できるのは「自転車歩道通行可」の標識があるか、13歳未満の子供、70歳以上の高齢者、身体が不自由な人に限られる。
道路事情でやむを得ない場合は認められるが、その際も車道寄りを徐行し、歩行者の通行を妨げてはならない。わがもの顔で歩道を疾走し、ベルを鳴らして歩行者をどかすような運転は2万円以下の罰金だ。
自転車は便利で健康にも寄与するが、一方で重大事故の加害者にも被害者にもなり得る。道交法を守るのは最低限の義務であり、その上で自らと他者を守るマナーが必要である。
▼その後、友人に自転車を返そうとしたが、やはり乗れなかった。「仕方がないので一日がかりでかついで返しに行った…」(『父の詫(わ)び状』文春文庫)。「逃げなければ」の一念で乗れないことを忘れられたか。不思議である
宴会帰りの父の赤い顔、母に威張り散らす父の高声、朝の食卓で父が広げた新聞…だれの胸の中にもある父のいる懐かしい家庭の息遣いをユーモアを交じえて見事に描き出し、“真打ち"と絶賛されたエッセイの最高傑作。また、生活人の昭和史としても評価が高い。1981年航空機事故で急逝した後も根強い人気を誇り、太田光氏、星野源氏はじめ多くの新たな熱烈なファンを持つ著者の第一エッセイ集。
目次 父の詫び状/身体髪膚/隣りの神様/記念写真/お辞儀/子供たちの夜/細長い海/ごはん/お軽勘平/あだ桜/車中の皆様/ねずみ花火/チーコとグランデ/海苔巻の端っこ/学生アイス/魚の目は泪/兎と亀/お八つの時間/わが拾遺集/昔カレー/鼻筋紳士録/薩摩揚/卵とわたし/あとがき/解説 沢木耕太郎
▼昔に比べ、自転車に乗れないという方は少ないだろうが、むちゃな乗り方は厳禁である。改正道路交通法が施行され、11月から自転車走行中のスマートフォン使用が罰則の対象になった。いわゆる「ながら運転」である。ときどき、やっている人を見かけるが、ひやひやする
▼罰則は、「ながら運転」で事故などの危険を生じさせた場合、「1年以下の懲役または30万円以下の罰金」というから厳しい
▼もう一つ、厳しくなったのが自転車の酒気帯び運転。自動車と同じで、自転車も「飲んだら乗るな、乗るなら飲むな」を肝に銘じたい。飲んだ後、まさか向田さんの父上のように自転車を担いで帰るわけにもいくまい。
健康に良く地球に優しい。人間が作った最高の乗り物といわれる自転車は210年ほど前にドイツで発明されたという。舵(かじ)はあるがペダルなどはなく乗り手が地面を蹴って進んだ。
実はその約80年前、今の滋賀県彦根市で世界初の自転車が誕生したとの説がある。彦根藩士の平石(ひらいし)久平次(くへいじ)時光(ときみつ)が発明した乗り物は車輪付き小舟のような形で、足でクランクを踏み車輪を回す構造はまさに自転車。ただ車輪は三つあり、自転車と呼べるか-との議論もあるとか。
いずれにしろ自転車の歴史は存外浅く、急速に普及したのは「最高の乗り物」だからか。ただ乗り方を誤れば危険も伴う。今月1日施行の改正道交法は運転中のスマートフォンなどの使用に対する罰則を強化。スマホを注視して運転したり、手に持って通話した場合は6カ月以下の懲役または10万円以下の罰金。事故など交通の危険が生じれば懲役1年以下、罰金30万円以下。酒気帯び運転も罰則付き違反とした。
厳罰化の背景には自転車事故の増加がある。車の運転中に若者の「ながら運転」にひやりとしたことも。ただ今回の法改正を含む交通ルールを、免許不要の自転車ユーザーは正しく把握しているか。
当局の取り締まりも必要だがルールの周知徹底は事故撲滅の一丁目一番地。例えば自転車をしまい込む積雪期に重点的に講習会を開く、などの試みはできないものか。
北欧・デンマークの首都、コペンハーゲンは「自転車先進都市」として知られる。市内に約400キロもの幅広い専用道が張り巡らされ、自転車がびゅんびゅん駆け抜ける。一定速度で走るとほとんど信号にかからないよう、工夫した区間もある
▲日本では来月1日から、自転車を巡る罰則が変わる。酒気帯び走行が新たに処罰対象になり、スマートフォンを見ながらの走行への罰則が強化される。昨年、国内で自転車が関係した交通事故は約7万2000件起き、全体の約23%に及ぶ。約8割が自動車との事故で、約4%は歩行者を巻き込んだ。危険走行の取り締まり強化は必要だろう
▲ただし、車道の環境は自転車にとって厳しい。自転車マークが描かれ左側走行を指導する道路が増えた。だが、加速した車がひんぱんに真横から追い越し利用しにくい道も多いようだ
▲自転車専用通行帯はどうか。小紙の本社近くに整備されているレーンを試走した。多くの自動車が停車して進路を塞ぎ、何度も車道に入る必要があった。おそらく「ママチャリ」は怖くて走れまい