能登の被災者宅でミカン6個窃盗の大学生が退学に…愛教大のコンプライアンス精神に納得(2024年4月3日『サンケイスポーツ』-「甘口辛口」)

火災で壊滅的な被害を受けた輪島朝市

 

■4月3日 能登半島地震の被災者宅からミカンを盗んだ愛知教育大の学生が退学処分になった。大学が1日にホームページで公表し、謝罪した。3年生だった学生は1月5日、ボランティアで赴いた石川県輪島市で家人が避難した住宅の玄関扉を縛っていたひもをほどいて侵入。ミカン6個を盗み窃盗の現行犯で逮捕された。

 判決は懲役1年6月、執行猶予3年。ミカン6個でずいぶん重いなと思ったら、学生は「バイト先の友達からもらった」という大麻取締法違反(所持)も発覚して窃盗、住居侵入と3つ合わせての判決だったという。退学は当然という見方もあれば厳しすぎると思う人もいるだろう。

 1月5日、大学は被災地に向け「本学は必要な支援を行っていく所存。1日も早い復興を願っております」と野田敦敬学長名でメッセージを送っており、同じ日の犯行は大学の面目丸つぶれ。「学内基準で停学もあったが、社会的影響の大きさから会議で退学やむなしになった」と大学の担当者。ふつうは公表しない個人の問題をHP上に公表したのも異例とか。

 思い出すのは合宿先の旅館で酒を飲み、胴上げして天井に穴を開け障子をボロボロに破り、備品を壊すなど狼藉の限りを尽くした約60人の神戸大のバドミントン同好会だ。理事や教授が会見で謝罪し調査委員会を立ち上げて関与した学生の処分を検討するというが、本来なら警察沙汰になってもおかしくない事案だ。

 幹部の学生を同席させ心からの謝罪があればまだ納得できるが、大学側の会見だけではあまり意味がない。たかがミカン…とはいえ、うやむやにせず退学に踏み切った愛教大のコンプライアンス精神が妙に腑に落ちた。(今村忠)