ギャンブル依存症(2024年4月3日『熊本日日新聞』-「新生面」)

 <ギャンブル依存症の人は、のめり込みを隠すためにうそをつく><取り返しのつかない状態になるまで身内が気付かないのもそのせいだろう>。米国精神医学会の分析などを参考に、小欄にこう記したのは6年前のこと

▼そんな“定説”をそのまま形にしたようなスキャンダルである。大谷翔平選手の通訳を務めていた水原一平氏による違法賭博問題。取材に応じた大谷選手は、自らの関与を否定し「(水原氏が)うそをついた」と繰り返した

▼相棒の“異変”に気付かなかったのか。巨額の資金が自身の口座から送られたことを本当に知らなかったのか。疑問も残ったが、自分は被害者だとする説明に「うそ」はなさそう

▼それにしても、水原氏はなぜそこまでギャンブルにのめり込んだのだろう。スーパースターとずっと行動を共にしているうちに、金銭感覚がまひしたのか。四六時中注目され、自由に出歩けないストレスのはけ口をスポーツ賭博に求めたのか

▼ギャンブルは全て悪、などと決め付けるつもりはない。ただ、少なくとも法が認める範囲内で、そして自分の稼いだ金で楽しむものだ。軍資金が底を突いたら終わり。借金を作り、相棒の金をあてにするなんてあり得ない

▼世間を沸かせ続けた大谷選手に冷や水を浴びせた今回のスキャンダル。ファンはこれからもずっと応援したいのだ。だからこそ一日も早く、全ての経緯を明らかにしてほしい。「ドジャーブルー」に「真っ赤なうそ」は、あまりにもミスマッチ過ぎて全然似合わない。