「金利ある世界」では、銀行の役割がこれまで以上に重要になる。経済の血流改善を促進しなければならない。
日銀が異次元の金融緩和を転換し、約17年ぶりとなる利上げに踏み切ったことで、銀行の金利も動き始めた。
メガバンク3行は普通預金の金利を従来の年0・001%から20倍の0・02%に引き上げると発表した。他の金融機関も追随している。定期預金の金利引き上げも相次いでいる。
経済の回復が進めば、貸出金利も上昇していくと見られる。
銀行は本来、集めた預金に支払う利子と、企業などに貸し付ける金利の「利ざや」で稼ぐビジネスモデルだった。
しかし、異次元緩和による超低金利環境で収益構造が崩れ、地方銀行を中心に金融機関の経営が圧迫されていた。
金利復活で利ざやの改善が進むことは、銀行にとって追い風だ。ただし、業績改善にあぐらをかくようなことがあってはならない。
何より求められるのは、持続的な賃上げが可能となる経済の前向きな動きを後押しすることだ。
大企業で進む高い水準の賃上げの流れを中小企業に波及させる必要がある。生産性向上など収益性の改善が不可欠だ。その支援に注力してほしい。
実質無利子・無担保融資など新型コロナウイルス対策で導入された支援制度が終わったこともあり、倒産する企業が増えている。
過剰債務を抱えた企業が今後、淘汰(とうた)される事態もあり得るだろう。だが、将来性のある企業まで倒れることになれば、経済にとって大きな損失である。
将来性のある技術や人材を見いだし、新たな成長分野に導くのは銀行の大切な仕事の一つだ。経済をけん引する業界や、革新的な技術に対する投資を活性化させることが欠かせない。
一方で、借り入れコストの増加に直面する中小企業に目配りし、負担増に耐えうるよう支える取り組みも必要となる。
金利上昇のプラス効果を最大化し、マイナス面を可能な限り最小化する。今、銀行に期待されるのは、経済の好循環を促す金融機能の発揮だ。