小林製薬が製造・販売した「紅麹(べにこうじ)」成分入りのサプリメントで健康被害が相次いでいる。同社は市販の医薬品や生活雑貨などで、数々のヒット商品を世に提供し続けてきた有名企業。「〝あったらいいな〟をカタチにする」というブランドスローガンを掲げ、新規商品の開発に果敢に挑んできた。紅麹もその一つだっただけに、今回の問題は衝撃が大きい。
【一覧で見る】小林製薬の紅麹を使用し、自主回収に踏み切った主な企業と商品名
「お客さま一人ひとりのお困りごとを解決することで健康で快適な生活や社会での活躍をサポートする」 小林章浩社長は同社のホームページのあいさつでそう書いている。顧客ニーズを他社より早くつかみ、独創的な商品で市場を生み出す。同社はそうしたビジネスモデルを確立して成長を遂げてきた。
今から138年前の明治19年、小林忠兵衛が名古屋市で創業。高度成長期以降、消炎鎮痛剤「アンメルツ」や水洗トイレ用芳香洗浄剤「ブルーレット」、芳香消臭剤「サワデー」などのCMで多くの人が知る商品を次々と生み出した。
令和5年12月期には連結での売上高が1734億円、最終利益が203億円という好業績を挙げている。処方箋が必要な医療用医薬品はつくっておらず、ドラッグストアで買える市販薬や生活雑貨が主力だ。 紅麹事業は平成28年にグンゼから譲渡を受け、健康被害が出ているサプリ「紅麹コレステヘルプ」は、悪玉コレステロールを下げる効果があるとして令和3年に発売。サプリをはじめ健康食品でも業容を拡大しているさなかだった。
サプリの自主回収を発表した3月22日まで6千円台だった株価は、その後、一時4千円台まで急落した。
3月29日の記者会見で、小林社長は「病気の予防や健康の維持は重要な分野で、許されるなら貢献したい。健康食品を開発したい」となおも意欲を示したが、今は問題への適切な対応が何より求められている。(牛島要平)