袴田巌さん再審 「5点の衣類」血痕の色で専門家5人に証人尋問(2024年3月27日『NHKニュース』)

58年前、静岡県で一家4人が殺害された事件で死刑が確定した袴田巌さんの再審=やり直しの裁判は最大のヤマ場を迎え、争点となっている「5点の衣類」に付いた血痕の色について、検察側と弁護側の専門家5人が一堂に会する形で尋問が行われました。

58年前の1966年に、今の静岡市清水区でみそ製造会社の一家4人が殺害された事件で、死刑が確定した袴田巌さん(88)の再審では27日、検察側の専門家2人と弁護側の専門家3人、それぞれに見解を尋ねる「対質」と呼ばれる尋問が行われました。

再審では、事件の発生から1年2か月後に、現場近くのみそタンクから見つかった「5点の衣類」に付いていた血痕に、赤みが残っていたことが不自然かどうかが、最大の争点になっています。

静岡地方裁判所の法廷では5人の専門家が証言台の前に並んで座り、裁判官が血痕に赤みが残るかどうか尋ねると、検察側の鑑定を行った久留米大学の神田芳郎教授は「みそタンク内の条件があまりにもわからないので、赤みが残る可能性がないとはいえない。弁護側の専門家が『赤みが残らない』と断言していることに違和感がある」と主張しました。

一方、弁護側の鑑定を行った旭川医科大学の清水惠子教授は「血液が体の外に出たあと、みその成分にさらされれば化学変化が進行して黒く変化する。当時のみそタンク内の条件を100%再現するのは不可能だが、確率論的に起こりえる結論を提示している」と反論しました。

袴田さんの再審は5月22日にすべての審理が終わる見通しです。

釈放認める決定出した元裁判官など法改正訴え 

27日は10年前に静岡地方裁判所の裁判長として袴田巌さんの釈放を認める決定を出した元裁判官などが、裁判所の前で街頭活動を行い、審理が長期化しないよう再審に関する法律の改正が必要だと訴えました。

58年前の1966年に、今の静岡市清水区で一家4人が殺害された事件で死刑が確定した袴田巌さん(88)は、10年前の2014年3月27日に静岡地裁の決定で再審と釈放が認められました。

しかし、検察が不服を申し立て、決定は東京高裁で取り消されたため、最初に裁判のやり直しを求めてから去年、再審開始が決まるまでに40年以上かかりました。

釈放から27日で10年となるのにあわせて、再審に関する法律の改正を目指す日弁連=日本弁護士連合会は、袴田さんの再審が開かれている静岡地裁の前で街頭活動を行いました。

10年前に静岡地裁の裁判長として、袴田さんの再審と釈放を認める決定を出した元裁判官の村山浩昭さんも参加し、通りかかった人たちにパンフレットなどが入ったバッグを配りながら、審理が長期化しないよう法律を改正する必要があると訴えていました。

村山さんは「再審が開かれるまでにこんなに時間がかかるとは思わず、今の法制度がおかしいと言わざるをえない」と述べました。

そのうえで、袴田さんの再審について「きちんと審理が進み、なるべく早く判決が出てほしいと思います」と話していました。 

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