検察側証人、高裁決定を批判 袴田再審「科学リテラシーない」(2024年3月25日『共同通信』)

支援者に連れられ、日課の散歩に出かける袴田巌さん(右)=25日午後、浜松市

 1966年に静岡県清水市(現静岡市)でみそ製造会社専務一家4人が殺害された事件で死刑が確定した袴田巌さん(88)の再審第10回公判が25日、静岡地裁(国井恒志裁判長)であり、検察側が請求した証人の尋問が行われた。久留米大の神田芳郎教授(法医学)は、弁護側の鑑定を疑問視し、再審開始を認めた昨年3月の東京高裁決定について「科学リテラシー(知識や判断力)がない」と批判した。

 神田氏は、最大の争点となっている「5点の衣類」の血痕の色調について「赤みの定義は観察者の主観によって変わる」とした上で「絶対に赤みが残らないことを証明することは不可能」と指摘。弁護側の鑑定人が血液を用いて変色の実験をしたことに「一般論として、血液より血痕の方が化学反応は遅くなる」と疑問を呈した。

 また、九州大の池田典昭名誉教授(法医学)は、酸素濃度などの変色を阻害する要素が検討されていないと指摘した。

 衣類は事件から約1年2カ月後にみそタンクから見つかり、確定判決が犯行着衣と認定した。