商店街デジタル化/導入の利点示して普及図れ(2024年3月27日『福島民友新聞』-「社説」)

 県内の商店街の6割超が中心市街地に立地している。デジタル技術を有効に活用し、各店舗の収益向上、まち全体のにぎわい創出につなげることが大切だ。

 県が新年度、商店街のデジタル変革(DX)の促進に向けた支援事業を始める。キャッシュレス決済やオンライン販売システムの導入、仮想現実(VR)技術を活用した取り組みなどを後押しする。

 新型コロナウイルスの流行に伴い、大型スーパーやコンビニでは現金を使わない非接触のキャッシュレス決済などが浸透した。しかし、県が2022年度に実施した商店街実態調査では、回答のあった県内114の商店街のうち約7割がキャッシュレス決済に「取り組んでいない」としている。

 釣り銭の用意など現金管理の手間が省けるものの、端末の購入・リース費の負担、利用する客が少ない、決済手数料の負担―などが導入が進まない理由だ。

 顧客の利便性向上、売り上げなどの情報のデータ化など利点は多い。QRコード決済など初期投資を軽減できる方法もある。県は導入の利点を示した上で市町村、商工団体と連携して端末などの導入経費を支援し、小規模店舗の多い商店街で普及を図る必要がある。

 既に商店街のデジタル化を支援している東京都や埼玉県では、電子決済の導入に伴い、スマートフォンを使ったスタンプラリーや電子クーポンの発行などで売り上げを増やした店舗がある。

 決済やデータの管理以外にも、来店者の増加、加盟店舗の収益向上が期待できる活用法はある。ただ店舗経営者の高齢化が進んでおり、デジタル分野に詳しくない人もいる。県や商工団体は、専門人材の派遣などを通して、デジタル技術を活用したアプリの開発などへの支援を強化してほしい。

 インターネットを使った通販サイトの利用が消費者に定着した中、商店街がネット上に仮想商店街を設ける取り組みが各地で始まっている。利用者はネット上の商店街を訪れ、実際の商店街と同じように並ぶ各店舗に「入店」すると、個別のホームページなどで商品を購入できる仕組みだ。

 店舗内の3D映像を公開し、店頭に並んでいる商品を詳しく確認できる店もある。セール情報などを動画や交流サイト(SNS)で発信したり、ネット上での顧客との対話を重視し、中小店舗ならではの「ご用聞き」に力を入れたりしている商店街もある。これまでの顧客とのつながり、充実したサービスなどの強みを生かし、デジタル化を展開することが重要だ。