小林製薬の紅麹、公表まで2か月…供給受ける食品・調味料メーカー「消費者にどう伝えれば」(2024年3月25日『読売新聞』)

 小林製薬が販売したサプリメントを摂取した人に健康被害が確認された問題で25日、同社から供給を受けた「 紅麹べにこうじ 」を使用する全国の食品や調味料メーカーで製品を自主回収する動きが広がった。公表までに時間を要したことについて、取引先からは、情報提供が不十分だと批判の声があがり、消費者は不安を口にした。

 紅麹原料は2016年から販売され、52社に原料として供給されていた。小林製薬は、サプリ以外で健康被害が出る可能性は低いとしている。

 同社は、提供先の個別の企業名について公表していない。これまでに宝酒造京都市)や紀文食品(東京都)が商品の自主回収を発表していたが、25日になって新たに回収を発表する会社が相次いだ。

 大塚食品大阪市)は紅麹を使って徳島工場(徳島市)で製造した「あわ 紅豆腐」の自主回収を発表した。22年8月1日~今月22日に出荷された約700個が対象で、東京や大阪など7都府県で販売したほか、徳島県ふるさと納税の返礼品にもなっていた。同社広報部は「小林製薬から詳しい説明がないので、問い合わせがあってもどう健康に影響するかなどを伝えられない」としている。

自主回収の対象となったサプリメントが撤去された薬局の商品棚(大阪市天王寺区で)=北島美穂撮影
自主回収の対象となったサプリメントが撤去された薬局の商品棚(大阪市天王寺区で)=北島美穂撮影

 竹屋(長野県)は「タケヤみそ 塩ひかえめ紅麹仕立て」の販売を一時中止し、自主回収すると発表した。藤森伝太社長は「商品の安全性について尋ねる問い合わせが相次いでいる。消費者にしっかりと説明する必要があり、早く原因を突き止めてほしい」と話した。

 紅麹を使用したみそを販売している高松市の食品加工会社は、ホームページで「販売中止の措置を取らせていただきます」と公表。岡山県でも、みそ製造会社など3社が県に自主回収について相談している。

 小林製薬が、問題を把握してから公表するまでに2か月以上を要した。

 今月22日、紅麹の成分が入ったサプリ「紅麹コレステヘルプ」を摂取した人が腎臓の病気になったと公表。血中のコレステロールを抑える効果をうたった機能性表示食品で、21年の発売後、累計で約110万個が販売されているヒット商品だ。

 問題は患者本人や医師からの指摘で今年1月に判明していた。サプリの利用者が一時的に人工透析が必要になるなどしていたが、同社の小林章浩社長は今月22日に開いた記者会見で「事実確認や原因究明に時間がかかってしまった。判断が遅かったと言われればその通りだ」と釈明した。

 東京都北区の男性会社員(43)は「誰もが知る製薬会社の商品なので、入院するほどの健康被害が起きたと聞いて驚いている。食べ物に知らないうちに紅麹が使われていたらと思うと、不安だ」と話した。