小林製薬「紅麹」摂取後の入院26人に 専門医「冷静な対応を」(2024年3月25日『NHKニュース』)

 健康

 

小林製薬」の「紅麹」の成分を含む健康食品を摂取した人が腎臓の病気などを発症した問題で、会社は25日、あらたに20人が入院していたことが判明したと発表しました。この問題で入院が確認された人はあわせて26人となりました。

一方で、名古屋大学特任教授で総合内科専門医の柴田玲医師は、「紅麹そのものが悪者というわけでは決してない」として、消費者には冷静な対応を呼びかけています。

※記事の最後に小林製薬が体調不良を感じる人を対象に設置した健康相談窓口について記載しています。

小林製薬は「紅麹」の成分を含む健康食品を摂取した人が腎臓の病気などを発症したことから、「健康食品が原因となった可能性がある」として今月22日、この成分を含む3種類の機能性表示食品の自主回収を発表しています。

会社は22日の時点で6人が入院したと説明していましたが、25日、あらたに20人が入院していたことが判明したと発表し、入院した人はあわせて26人となりました。

このうち4人は現在も入院しているということです。

入院した人の詳しい病状や、入院を伴わない体調不良の訴えが何人いるかについては「確認中」としています。

また、会社は、去年1年間に製造した紅麹原料18.5トンのうち16.1トンを子会社を通じて取引先に販売したことを明らかにしました。

このうち6.9トンは小林製薬が自主回収を進めている健康食品に使用しているものと同じ紅麹原料だということです。

この紅麹原料は健康食品などに使われているということですが、24日の時点で健康被害の訴えは確認できていないということです。

会社は予防的措置として、取引先に対して紅麹原料を使用したすべての製品の販売や使用を控え回収措置に協力するよう要請していて、食品メーカーなどが自主回収する動きが相次いでいます。

小林製薬は「全社を挙げて引き続き全力で対応し、情報提供を進めてまいります」とコメントしています。

自主回収中の商品の製造番号を公表 

製造番号の記載位置 商品パッケージ裏面の左下

小林製薬は自主回収を行っている機能性表示食品「紅麹コレステヘルプ」について、想定していない成分が含まれている可能性がある商品の製造番号を公表しました。公表された製造番号はあわせて18種類です。

J3017、X3037、X3027、X3017
H3057、H3047、H3037、H3027、H3017

F3037、F3027
E3037、E3027

D3079
X304

H306
G301
E301

このうち今月24日の時点で判明している入院患者が摂取していた商品の製造番号は6種類です。

X3017
H3047、H3037、H3027、H3017
H306

製造番号は製品パッケージの裏面の左下に記載されていて、小林製薬は製造番号にかかわらず商品を回収するとしています。

供給は52社 卸売業者通じてさらに別企業に販売 

小林製薬は、この健康食品に使っている原料を食品メーカーや飲料メーカーなど、国内外の52社に供給していることを明らかにしていますが、複数の卸売業者を通じてさらに別の企業に販売されていることが分かったということです。

このため、回収の規模がさらに広がるとみて販売先や回収状況について確認を急いでいます。

小林製薬は、これまでのところ供給先の企業の商品による健康被害の情報は把握していないとしています。

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紅麹とは 欧州で健康被害報告も 

「紅麹(べにこうじ)」は米などの穀類に麹菌の一種である紅麹菌を繁殖させてつくられたもので、古くから食品の着色料などとして使われてきました。

紅麹の「ロバスタチン」という成分にはコレステロールを低下させる作用があるとされ、紅麹由来の健康食品などが多く販売されています。

一方、紅麹菌の中には「シトリニン」というカビ毒をつくるものもあり、腎臓の病気を引き起こすおそれがあるとされています。

国の食品安全委員会によりますと、ヨーロッパでは紅麹由来の健康食品による健康被害が報告されていて、EUヨーロッパ連合は健康食品に含まれる「シトリニン」の基準値を設定しているということです。

小林製薬によりますと、今回の報告を受けて成分を分析したところ、「シトリニン」は検出されなかったということです。

一方で、「シトリニン」とは別の未知の成分の存在を示す分析結果が得られたということで、「意図しない成分が含まれている可能性が判明した」としています。

  • 注目

内科専門医「紅麹そのものが悪者というわけでは決してない」

「紅麹」について、名古屋大学特任教授で総合内科専門医の柴田玲医師は「紅麹は紅麹菌というカビの一種で米など穀物類を発酵させてつくられ、中国や台湾などでは薬膳や漢方薬として使用している。また、医薬品としてコレステロールを下げるために使う薬の成分と同じ成分が紅麹の中には含まれている。健康食品として使っているのに加えて、例えば着色料などたくさんの分野で出荷されている」と話しています。

もしも、対象となった商品を口にした場合はどうすればいのかについては「まずはおしっこの出が悪くなったとか、すごく手足がむくむなとか、そういった症状があれば医療機関に相談してほしい」と話しています。

一方で消費者には冷静な対応を呼びかけていて、柴田医師は「紅麹そのものが悪者というわけでは決してない。該当する食品や製品とは別の物で紅麹を摂取している方が極端に不安に思う必要はないので、このあたりは十分理解して欲しいと思う」と話しています。

《「紅麹」供給先企業で商品の自主回収相次ぐ》

小林製薬から連絡を受けた供給先の企業が商品の自主回収を発表しています。

「豆福」13商品を自主回収 名古屋市内の百貨店でも販売 

名古屋市の豆菓子専門店「豆福」は小林製薬健康被害のおそれがあるとして自主回収している紅麹原料を使っていたとして、対象の商品を回収し、販売を休止すると発表しました。

「豆福」によりますと、自主回収するのは、「豆だくさん」や「えびしおアーモンド」など13の商品で、小林製薬が製造した紅麹原料が使われているということです。

「豆福」は対象の商品を回収し、返品を呼びかけるとともに「お客様をはじめ関係各位に多大なるご迷惑をおかけしますことを深くおわび申し上げます」としています。

また、これらの商品は名古屋市の百貨店「ジェイアール名古屋タカシマヤ」と「松坂屋名古屋店」の和菓子売り場でも販売されていたということで、それぞれホームページで購入した人に対して商品を口にせず、売り場などに連絡するよう呼びかけています。

“電話やメールが殺到 信頼を失ってしまうのが残念”

名古屋市西区の「豆福」は創業85年目を迎える老舗の豆菓子専門店です。今回問題となった小林製薬の紅麹原料を商品に使用していて、問屋を通じて仕入れているといいます。

紅麹原料を使うことで豆菓子のうまみが増して風味が豊かになるため商品に使っていたということですが、今回の問題を知り、紅麹原料が使われている13の商品の自主回収を決めました。

「豆福」の福谷勝史代表取締役は「使用している原料が対象になるのかどうか小林製薬のホームページで確認したところ、合致する事が確認できたので直ちに取引先に連絡をして自主回収に動きました」と話していました。

25日は本来であれば休業日ですが、休日返上で対応にあたっているということで、福谷代表取締役は「数え切れないほどの電話やメールが殺到している状況ですが、健康被害を気にしているお客様もいますし、贈り物として差し上げるお客様もいて、どうしてくれるんだという方もいます」と話しています。

また、25日夕方の時点で小林製薬からの連絡はなく、当面は対象の商品の販売を休止するということです。

福谷代表取締役は「もう少し詳しく迅速な情報公開を求めたいところです。まっとうに菓子作りに励んできたつもりなんですけれど、今回のようなことで信頼を失ってしまうのが非常に残念だなと思います」と話していました。

「甘強酒造」「紅麹梅酒」を一時販売中止し自主回収

愛知県蟹江町の酒造会社「甘強酒造」は、小林製薬が回収を発表した紅麹原料を使用している可能性があるとして、対象の商品を自主回収すると発表しました。

「甘強酒造」によりますと、対象となる商品は「紅麹梅酒」で、小林製薬が回収を発表した紅麹原料を使用している可能性があるとして、一時的に販売を中止するとともに商品を自主回収することを決めました。

今のところ、「甘強酒造」の商品を飲んで健康被害などは確認されていないということです。

会社では、対象商品の購入者に対し、
▽会社の通販サイトにある問い合わせフォームや
▽メールアドレスを通じて連絡するよう呼びかけています。

大塚食品」「あわ 紅豆腐」を自主回収 

大阪に本社がある食品メーカーの「大塚食品」は、「小林製薬」が製造した紅麹原料を使っていた商品「あわ 紅豆腐」を自主回収すると発表しました。

会社によりますと、この商品は東北や関東、関西、中国・四国の小売店などで販売されていて、自主回収の対象となるのは賞味期限が再来年(2026年)7月までのものです。

これまでにこの商品を購入した人から健康被害の申し出はないということです。

大塚食品は、対象の商品を持っている場合は食べずに回収専用の窓口まで送るよう呼びかけています。

宝酒造」一部の日本酒を自主回収 

京都市に本社がある大手酒造メーカー「宝酒造」は日本酒の「松竹梅白壁蔵『澪』PREMIUM〈ROSE〉」を自主回収します。

「ZERO PLUS」一部の米菓を自主回収 

福岡市の通信販売会社「ZERO PLUS」は「悪玉コレステロールを下げるのに役立つ濃厚チーズせんべい」を自主回収します。

これまでのところ、供給先の企業の商品による健康被害の情報は把握していないとしています。

紀文食品イカの塩辛の商品を自主回収 

紀文食品」は、イカの塩辛の商品を自主回収するとホームページで発表しました。小林製薬が自主回収を発表した健康食品に含まれる紅麹を原材料として使用しているということです。

紀文食品」のホームページによりますと、自主回収するのは「国産いか使用いか塩辛」など2つの商品で、会社が指定する送り先に商品を着払いで送れば、後日、購入代金を返還するとしています。

紀文食品」は「大変ご迷惑をおかけし、謹んでおわび申し上げます。今後、管理体制の一層の強化に努めていきます」などとしています。

「竹屋」タケヤみそ『塩ひかえめ紅麹仕立て』の販売一時中止

長野県に本社のあるみそメーカーの「竹屋」は、小林製薬が製造した紅麹を使用していたとして、対象の商品を自主回収すると25日、発表しました。

「竹屋」によりますと、対象となるのは「タケヤみそ『塩ひかえめ紅麹仕立て』」で、小林製薬が製造した紅麹を原料として使用していることから、販売を一時中止とするとともに、商品の自主回収を決めました。

会社では商品の購入者に対し、指定する送り先に商品を着払いで送るよう呼びかけています。

会社によりますと、この商品が販売されていたのは、
▽長野県諏訪市の本社に併設する直売所と、
▽自社のホームページのオンラインショップのみで、スーパーなどに流通している商品はないということです。

「富山薬品」も健康食品を自主回収

富山市の製薬会社「富山薬品」は小林製薬が回収を発表した紅麹原料を使用した健康食品を販売していたとして、2種類の商品の自主回収を始めました。

「富山薬品」によりますと、自主回収を始めたのは、健康食品の「レッダームDX」と「ルーレンゴールド」の2つの商品で、いずれも小林製薬が回収を発表した紅麹原料を使用していたということです。

25日から販売先の全国の薬局に販売中止と自主回収の連絡を順次進めているということです。対象となる商品の数は、2種類あわせて数千個にのぼる見込みですが、これまでに健康被害などは確認されていないということです。

「富山薬品」は健康被害があった場合は、会社か購入した薬局に相談してほしいとしています。

金谷ホテルベーカリー」3商品を自主回収

栃木県日光市にあるパン製造・販売会社「金谷ホテルベーカリー」は、「小林製薬」が製造した紅麹原料を使っていたパン、3つの商品を自主回収すると発表しました。

これまでにこの商品による健康被害は確認されていないということです。

金谷ホテルベーカリー」によりますと、対象の商品は「いちごブレッド」「いちごロール」「春のあんぱん」の3つです。

小林製薬が回収を発表した「紅麹」を原料として使用しているため、23日から県内9つの店舗すべてで販売を中止するとともに、商品の自主回収を進めるということです。

これまでにこの商品による健康被害は確認されていないということです。

会社では対象の商品を購入した人に対し、日光市土沢にある本社まで商品を着払いで送るようホームページなどで呼びかけていて、後日、返金するとしています。

金谷ホテルベーカリー」の営業本部は、「パンは、すべて、日光市内の工場1か所で作っています。1種類作り終えるたびに製造ラインを洗浄しているのでほかの商品への混入はありません」としています。

「伝食」の商品も自主回収を発表

福井県敦賀市にある食品メーカーは、小林製薬が製造した紅麹原料を使っていた商品を自主回収するとホームページ上で発表しました。

これまでに商品による健康被害などは確認されていないとしています。

自主回収の対象となるのは、敦賀市にある食品メーカー「伝食」が販売している「祖の食庵納豆キナーゼ」です。

メーカーのホームページによりますと、原材料の購入先から、回収が発表された小林製薬の紅麹原料を使用しているため、商品を回収するよう連絡があったということです。

これまでにこの商品による健康被害などは確認されていないということで、メーカーは対象商品の自主回収への協力を呼びかけています。

  • NEW

台湾でも小林製薬の紅麹原料などの輸入記録見つかり回収へ

台湾当局によりますと、域内の2社が小林製薬の紅麹原料を輸入した記録が見つかったということです。

おととし1月から今月2日までの間にあわせて56ロットの輸入検査申請があったということで、この紅麹原料を使用した製品の回収を2社に指示しました。

また、小林製薬の紅麹原料を使用しているとして宝酒造が自主回収すると発表した日本酒を、2つの業者が輸入していたこともわかり、台湾当局は2社にこの日本酒の回収を求めるとしています。

小林製薬「紅麹使用なら直ちに使用中止を」 

小林製薬は「供給先の企業でも製品の回収となっていることについて大変申し訳ありません。手元にある商品が小林製薬の紅麹原料を使用したものだと分かったらお客様は直ちに使用の中止をお願いいたします」とコメントしています。

体調不良を感じる人の健康相談窓口(小林製薬

小林製薬は、自主回収中の機能性表示食品を食べたことがあり、体調不良を感じる人を対象に相談窓口を設けています。

※25日現在、電話がつながりにくくなっているとしています。

<通信販売で購入した人>
対象製品:紅麹コレステヘルプ 15日分・30日分
小林製薬信販売 紅麹健康相談受付センター
電話番号:0120‐58‐5090
受付時間:9時~17時(土日・祝日は除く)
※4月末までは土日・祝日も対応

<ドラッグストアなどの店舗やECサイトで購入した人>
対象製品:紅麹コレステヘルプ 20日分、ナイシヘルプ+コレステロール、ナットウキナーゼさらさら粒GOLD
小林製薬 紅麹健康相談受付センター
電話番号
▽3月26日まで:0120‐5884‐12
▽3月27日以降:0120‐880‐220
受付時間:9時~17時(土日・祝日は除く)
※4月末までは土日・祝日も対応