「ライトが二塁けん制に入る」高校野球に審判は対応できるのか まずは春夏の全国大会でビデオ判定導入を!(2024年3月24日『サンケイスポーツ』-「甘口辛口」)

京都外大西・上羽功晃監督

■3月24日 「お~っと、内野が5人に…」。テレビのアナウンサーは叫んでいた。20日の選抜高校野球大会1回戦で京都外大西が見せたプレーには驚いた。春連覇を目指す山梨学院の選手は動じなかったが、高校野球の面白さを垣間見たシーンだった。

 場面は京都外大西の1点リードで迎えた四回1死二、三塁の守備。打席には6番打者。内野陣は前進守備。外野手も前に来ていた。そんな状況で、投手からの二塁けん制に右翼手が入った。プロでは考えられないトリックプレー。確かに「内野手5人」になっていた。

 二塁走者が素早く帰塁したため、投手が投げることはなかった。もしクロスプレーになっていたら、審判が反応できたのだろうかと率直に思う。想定を重ねた準備段階で「ライトのけん制参加」は脳裏にあったか。高校野球でも検討されているビデオ判定の早期導入が改めて必要だと感じた。

 投手の安全性を確保するために反発力を抑えた新基準バットが導入された。投球数制限、休養日設定に延長十回からのタイブレーク。選手のコンディション維持に向け、高野連は次々と改革に踏み切った。今度は微妙な判定の撲滅に踏み切るべきだ。右翼ポール際に吸い込まれた今大会の第1号本塁打も、難しいジャッジだった。

 高野連は昨年12月の理事会で映像判定の是非について議論中だと明らかにした。選手や審判の思いをくみ取って賛成意見がある一方で「そこまですべきか」との慎重論もある。それでも「外野手が全力疾走で二塁に向かう」野球に対応するためには、ビデオの力を借りるしかない。クリアすべき点は多いだろうが、まずは春夏の全国大会からの導入で、その一歩を記してほしい。(稲見誠)