【新・親も知らない今どき入試】
今週は、2024年度の私立大一般選抜で志願者が増えた学部系統をランキングした、「主要私立大の人気学部ランク」を見ていこう。主要100私立大を集計対象とし、志願者総数が1万人以上の系統について、前年と比較した増加指数でランキングした。
学部志望状況は、社会の動きと密接にリンクしている。ランキング中、情報・メディア系の志願者の増え幅が最も大きいことはその傾向を端的に表している。 今の日本が抱えている大きな課題は、諸外国から後れを取っているとされるIT関連技術だ。
遅まきながら文部科学省は、「デジタル化の加速度的な進展や脱炭素が世界的な潮流であり、労働需要の在り方に根源的な変化をもたらすもの」とし、デジタルやグリーンといった成長分野を担う人材養成を後押しする「大学・高専機能強化支援事業」を始めた。 その大きな柱は、大学に予算を配分して、DX(デジタル・トランスフォーメーション)やGX(グリーン・トランスフォーメーション)人材を養成するための学部再編などを進めることにある。
もともと、データサイエンスなどIT関連技術に対して受験生の注目度が高いところに、情報関連の学部新設が進んでいることから、情報・メディア系の志願者が増えているのだ。環境問題に対する受験生の関心も高いことから、農学系も3番目に志願者が増えた系統となっている。 グローバル化も日本社会が抱える課題といえる。
そうした文脈から志願者が増えているのが2位の外国語系と、10位の国際系だ。コロナ禍で人気が下がっていた学部系統だが、外国との往来が復活したこともあり志願者が増えている。予備校関係者は言う。 「外国語や国際はコロナ以前に人気が高い学部系統だったが、コロナ禍で半数近くまで志願者が減った。志願者は増えているが、まだまだ受験生にとってお手頃な学部だ」 外国や国際と同様にコロナ禍で志願者が大幅に減少した観光系も人気が戻り6位に入った。
一方、コロナ禍で医療への関心が高まり人気が上がっていた、医学系(103・1)や医療技術系(102・9)の志願者数は前年並みで落ち着いており、看護系(88・6)は大幅に志願者が減少している。学部系統別の志望状況は、コロナが過去のものになったことを示している。
他の系統を見ると、法(102・2)、商(101・9)、経済(99・1)、経営(97・9)といった社会科学系や、理工系(99・2)の出願状況は落ち着いており、ほぼ前年並み。
全ての系統の中で、志願者の減少が最も大きいのは家政・栄養系(76・5)。女子の学部志望の傾向が、法などの社会科学系や理系学部にシフトしている影響を大きく受けることになった。女子大の志願者の減少が続き、24年度も前年を10%程度下回っている。女子大に設置が多い家政・栄養系の減少は、女子大の厳しさの象徴といえそうだ。
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