岸田首相に湧き上がる「全敗となれば即辞任」の声 補選秘策は小池百合子のウルトラCで大丈夫?(2024年3月22日)

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 4月28日に投開票が予定されている衆議院補欠選挙細田博之衆院議長の死去に伴う島根1区、安倍派裏金事件で議員辞職した谷川弥一衆院議員(略式命令が確定)の長崎3区、公職選挙法違反の罪で起訴され有罪判決を受けた柿沢未途前法務副大臣の辞職に伴う東京15区の3選挙区で行われる。3敗だけは避けたい岸田文雄首相が、何か秘策があるのだろうか。

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「3敗となれば即座に辞任だ。大きな政局となるはず。3年前と同じ、いやそれ以上に厳しくなる」  そう話すのは、茂木派の国会議員だ。

 2021年春の参院選の再選挙、衆参補欠選挙では、河井克行元法相と妻、案里元参院議員の大規模買収事件で批判が高まるなか自民党は3連敗(うち不戦敗1)した。菅義偉首相(当時)は一気に苦境となり、秋の自民党総裁選は不出馬に追い込まれた。それもあってか今回は当初、岸田文雄首相は3選挙区とも「候補者擁立」と執行部に伝えていたという。

■野党系候補は一本化へ

 しかし、東京15区と長崎3区は自民党議員の刑事事件がきっかけの選挙となり、 「3年前は自民党の不祥事で反省を、という意見のなかで菅氏が候補者擁立を主張して大失敗だった。今回こそ、反省の意を示すため不戦敗で」(自民党幹部)という意見が多数を占めていたという。その背景には、保守王国の島根1区だけは勝てるとの目算があったからだ。

 自民は元財務官僚の錦織功政氏の擁立を決めたが、細田氏の裏金問題や旧統一教会との関係、セクハラ疑惑などで逆風が吹く上に、共産党立憲民主党が擁立する前衆院議員の亀井亜紀子氏を自主的に支援すると発表したことで、野党系候補は亀井氏に一本化。事実上の一騎打ちとなる見通しとなった。

「岸田首相は3敗だけは避けたい。そこで浮上したウルトラCのアイデアが、(東京15区での)小池百合子(東京都)知事との連携です」と岸田派の国会議員は話す。

 小池知事は、今年1月の八王子市長選では土壇場で自民党公明党推薦候補の応援に入り、当選に大きく貢献した。その勢いに乗って小池氏が「創立者」の都民ファーストの会から、東京15区に候補者を立てるという。

「かねがね小池知事自身が出馬とうわさされていましたが、それはまずない。近く都民ファースト公認もしくは推薦で、発表することになる。自民党からは保守系無所属でという話がきている。要するに小池知事に自民党、岸田首相が乗るということです。まあ、東京15区での自民党のイメージは最悪ですから仕方ありません」

 とは都民ファーストの関係者。

 東京15区では、柿沢被告が3月14日に一審で執行猶予付きの有罪判決、2020年1月には自民党衆院議員だった秋元司被告が収賄罪で起訴され、一審で実刑判決を受けており、3月22日に控訴審判決がある(20日に無所属での立候補を表明)。自民党衆院議員が2人続けて逮捕・起訴という前代未聞の事態だ。

■小池知事にとっては最高の展開

「小池知事に乗っかって、自民党保守系無所属を推して勝てるならそれにこしたことはない。小池知事自らがマイクを握り、支援が得られる都民ファーストと共同歩調をとり、負けないようにして政権維持を、というのが岸田首相の考え。小池知事は公明党とも良好な関係というのもプラスに働いている」

 と岸田派の国会議員が語る。

 小池知事は自民党を離れ、都知事になった後の2017年の衆院選で「希望の党」を立ち上げ、国政進出をもくろむも、民進党と合流するにあたり、リベラル派の議員を「排除します」と発言したことで失速。その後も「都民ファーストの会」を立ち上げ、チャレンジするも失敗に終わっている。そして、小池知事は今年7月に都知事選を控え、3選を目指すことが濃厚とも聞く。

「東京15区は都民ファーストで擁立すれば勝てるはず。小池氏は、自民党も乗りやすい格好にして恩を売る。都知事選では自民党もそう簡単に候補者を出せなくなる。実質的に小池知事の息がかかっている人を国会に送り込めて、かつ都知事選は絶対的に有利な構図がつくれる最高の展開だ」(前出・都民ファーストの関係者)

 また、岸田首相にとっては、広瀬めぐみ参院議員の不倫問題、自民党和歌山県連の「過激ダンスショー」の炎上、裏金事件の政治倫理審査会では何も明らかにならないなど、支持率が低下するような“ネタ”が相次ぐ。

今西憲之

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