水原一平氏解雇「かなりの痛手」 大谷翔平開幕戦でも通訳 「すべては自分の過ち」と告白も(2024年3月21日『産経新聞』)

開幕戦のベンチで味方の安打を喜ぶ大谷翔平(右)と水原一平通訳(左)=高尺スカイドーム(長尾みなみ撮影)

【ソウル=川峯千尋】韓国で行われた米大リーグ開幕戦から一夜明けた21日、ドジャース大谷翔平選手(29)の通訳を長年務めてきた水原一平氏(39)の解雇が発表された。球団側は理由を明らかにしていないが、複数の米メディアが水原氏が違法賭博に関与していた疑いを報じた。大谷を公私で支え、昨春のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)ではラーズ・ヌートバー選手招集の橋渡し役も果たすなど、グラウンド内外で功績が大きかった水原氏。解雇による痛手は大きい。

20日の開幕戦。逆転勝ちを飾ったドジャースのクラブハウスで報道陣に囲まれる大谷の左隣で、水原氏は通訳の仕事をこなしていた。表情はやや疲れているようにも感じたが、韓国メディアの求めに応じ、大谷が「サランハムニダー(愛しています)」と話す様子を笑顔で見守るなどいたって普通に見えた。

この時すでに、複数の選手は着替えを済ませてバスへと向かっていた。米スポーツ専門局「ESPN電子版」によると、この日の試合後、水原氏は選手たちの前で「すべては自分の過ちです」と罪を認め、「自分はギャンブル依存症です」と告白したという。大谷の取材前には、解雇が伝えられていた可能性もある。

水原氏は、2013年にプロ入りした大谷と同じタイミングで日本ハム入り。通訳だけでなく、練習ではキャッチボール役となり、移動の際には運転手も務めるなど公私で二刀流を支えていた。

WBCでは日本代表監督だった栗山英樹氏からの依頼を受け、米国で活躍する日系選手の情報を現地から共有。ヌートバーにはインスタグラムからメッセージを送ってコンタクトをとり、日系人初の日本代表招集につなげた。当時、栗山氏は「(対象の日系選手への)確認も全部やってくれた。表に出ていないところで、本当に一平が一生懸命頑張ってくれた」と感謝し、指揮官たっての希望で通訳としてチーム入り。侍戦士たちからは「一平さん」と慕われていた。

ウイットに富んだ通訳も魅力で、韓国戦で死球を受けたヌートバーのヒーローインタビューでは「死球で張っていたところが緩んだよ」という本人の言葉を「ちょうど凝ったところに(球が)ぶつかって、凝りがほぐれてよかった」と意訳し、観衆の笑いを誘った。本人の言葉を尊重しながらも米国人の文化を理解した翻訳は、大谷が米国で愛される一因でもあった。

MLB担当記者の一人は「大谷選手があまりいい言葉が見つからないときでも、意図を組んで翻訳できるのが一平さん。長い付き合いだからこそできることもあったはず。一平の解雇は大谷選手にとってかなり痛手だと思う」と残念がった。