俳優・田中要次さんが愛猫語る「姉妹猫に顔をうずめる変態でありたい」(2024年3月21日『日刊ゲンダイ』)

田中要次さんと愛猫たち(提供写真)
  
 うちの猫たちは全員女である。クマコ10歳、チャイ9歳、サビ8歳の年子3匹に、末娘のグリ1歳。そして妻だから、私以外にうちに男はいない。男は私一人でたくさんなのだ。

 4姉妹猫と妻に囲まれ、ハーレム状態で私がデレデレしているだけかというと、現実はそう甘くない。猫のトイレ掃除は私の役目だし(ウンチのしみひとつ残さず完璧に奇麗にできるのは私以外にない)、「猫が吐いてるよ」と妻が言えばすぐに処理に向かうのも私だ。

 私は猫歴トータル45年ぐらいにもなるが、妻も昔から猫と暮らしていた。そもそも私たちが結婚したのは、交際中に泊まっても翌朝は飼っていた猫タマの面倒をみるために帰らなければいけない彼女を送迎するのが面倒になったからでもある。それに深夜、彼女と私が布団で眠っていると、他人にはなれないタマが潜り込んできたのも要因のひとつだ。「2人の関係を認めてやるよ」という意思の表れのようで、彼女も驚いていた。

 私が結構きちょうめんに猫と接するのに対し、妻はスパルタである。タマの次にスズという猫を迎えたとき、威嚇をし続けるタマの態度に激高した彼女は、「どうして仲よくできないの!」と、2匹を浴室に一晩閉じ込めた。翌日、不思議なことにタマの威嚇は消えていた。こんな荒療治は逆効果になることもあるのだが、彼女のスパルタには特別な力があるらしい。

 そして現在の4姉妹猫。みんなそれぞれお気に入りの場所があって思い思いに過ごしているけれど、夜、妻が「寝るよ!」と一声かけると、ハンモックに寝ていたクマコも、毛づくろいしていたチャイも、大あくびをしていたサビも、おもちゃで遊んでいたグリも、寝室に向かう妻の後ろについてぞろぞろ一列に階段を下りていく。わが家を支配しているのは妻だという証しなのか、この儀式(?)は毎晩繰り返される。そして最後に電気を消して下りていくのは、わが家で唯一の男である私なのだ。

(構成=鈴木美紀) 

 

田中要次(たなか・ようじ) 1963年生まれ。長野県出身。国鉄JR東海の職員を経て俳優の道へ。竹中直人監督映画「無能の人」に照明助手として参加。エキストラも務めスタッフ兼業で芸能活動を開始。2001年、テレビドラマ「HERO」でバーのマスター役に起用されブレーク。映画からドラマまでバイプレーヤーとして幅広く活躍中。NHK連続テレビ小説「虎に翼」に出演。

 

日刊ゲンダイ特別号「日刊ニャンダイ」より)