あきれた自民党青年局「ハレンチ懇親会」 言い訳「多様性」でさらに評判落とす 岩田明子(2024年3月16日『週刊フジ』)

 
自民党青年局幹部や若手議員が参加した昨年11月の懇親会(一部画像を処理しています)

自民党が「時代遅れ」としかいいようのない体質を露呈した。青年局幹部や若手議員らが昨年11月、和歌山県内で開いた懇親会で、露出度の高い女性ダンサー5人を招待していた一件だ。ダンサーに口移しでチップを渡したり、体に触れたりした参加者もいたという。

懇親会は党和歌山県連の主催で、青年局の看板を掲げた「青年局近畿ブロック会議」の後に行われていた。ネット上には、懇親会の画像や動画が出回っている。

民間企業や国際社会の尺度でみれば、重大なコンプライアンス(法令順守)違反とされるであろう余興が政権与党の懇親会で行われていた。「ハレンチ懇親会」と報じたメディアもあったが、政治家としてだけでなく、社会人として常識が欠如している。あきれるほかない。

女性ダンサーを呼んだ和歌山県連青年局長の川畑哲哉県議(11日に離党)の「多様性の重要性を問題提起しようと思った」という釈明には反省の色も伺われない。性別や障害、年齢などといった多様性に対する尊重が、ハレンチ懇親会のどこにあるのか。言い訳に使う言葉としてあまりに不適切であり、この釈明が自民党の評判をさらに落としている。

 

 

昨年7月には、自民党女性局が行ったフランス研修で、女性局長だった松川るい参院議員(大阪選挙区)らがパリの「エッフェル塔」前でポーズをとったりするなど、「観光旅行」と受け取られかねない写真をSNSに投稿し、批判を浴びた。

今回の懇親会は、あれから4カ月後に行われていた。

派閥の政治資金パーティー裏金事件に代表される、自民党の「体質的な歪(ゆが)み」が、派閥幹部だけでなく若手や地方という末端にまで広がっているような気がしてならない。

懇親会に出席していた青年局の藤原崇局長(衆院岩手3区)と、中曽根康隆局長代理(衆院群馬1区)は8日、「党への信頼を損ねた。申し訳ない」と謝罪して辞任した。

だが、これだけで済む問題ではない。

懇親会の費用は党本部や県連の予算から支出したとされる。梶山弘志幹事長代行は「公費は出ていないということだけは確認できている」と説明したが、納得できない。党本部には税金を原資とする政党助成金が配分され、和歌山県連も例年、党本部から交付金を受け取っている。

このことからすれば、「ハレンチ懇親会」の費用の一部に公費が含まれている可能性が高い。そもそも、公費以前の問題であり、「公費が出ていないからセーフ」という線引きをしようとしても意味はない。

ともかく、45歳以下という年齢制限のある青年局のメンバーが、今の社会では到底理解を得られない懇親会に出席し、問題行為を黙認していたことは、自民党が「時代についていけていない」ことを示しているのではないか。

党政治刷新本部で、本件を取り上げて自民党議員の倫理観や道徳観、使命感、立ち振る舞いを議論し、政治風土の刷新を確認する方法もあるだろう。ただ、派閥の裏金事件で「国民の政治不信」が強まるなかで発覚した今回の醜聞のダメージは強烈だ。「自民党の病」は極めて深刻といえる。

岩田明子

いわた・あきこ ジャーナリスト・千葉大学客員教授中京大学客員教授。千葉県出身。東大法学部を卒業後、1996年にNHKに入局。岡山放送局で事件担当。2000年から報道局政治部記者を経て解説主幹。永田町や霞が関、国際会議、首脳会談を20年以上取材。昨年7月にNHKを早期退職し、テレビやラジオでニュース解説などを担当する。月刊誌などへの寄稿も多い。著書に『安倍晋三実録』(文芸春秋)。

岩田明子「さくらリポート」(zakzak)