やめられないったら(2024年3月14日『宮崎日日新聞』-「くろしお」)

 刑事ドラマ「相棒」の第22部が来週終わる。一昨年復活した水谷豊、寺脇康文さんのコンビが事件を解決する数々の物語を今回も楽しんだ。実はこの2人が共演する刑事ドラマは「相棒」が初めてではない。

 1991年から放映された「刑事(デカ)貴族」が最初だ。若き水谷さん演じる刑事は「相棒」の冷静沈着な杉下右京とは違い軽やかだった。よく口にするせりふがいくつかあったが、その中でも特に印象的だったのが「あー、お恥ずかしいったらありゃしない」だった。

 水谷さんが、あの独特の声とイントネーションで発するこのせりふは妙に耳に残っており、今でも何かあるとまねして口にしている。先日は心の底からこのせりふが口をついて出てしまった。露出の多い衣装の女性ダンサーを招いた自民党和歌山県連主催の懇親会である。

 そうした会合がお恥ずかしいなら、それを「ダイバーシティ(多様性)」だという企画者の県議の釈明もお恥ずかしい限りだ。女性閣僚をはじめ身内からも批判の声が上がる。ダンサーを招いた県議は離党、出席した衆院議員2人は自民党青年局の役職は辞任したが、議員辞職には言及していない。

 「お恥ずかしいったら―」のせりふは、後に形を変えて水谷さんが出演する缶チューハイのCMに使われた。グイッと飲み干した後に「あー、やめられないったらありゃしない」と。今回の当事者である議員さん方も、この心境か。「辞められないったら―」