被害訴えた24歳女性【会見詳報】当時10代の娘に性的暴行の疑いで逮捕された父親は黙秘(2024年3月12日)

■里帆さん自身が当時の状況を語る

記者:「改めて里帆さんの口からご自身に何があったのか、お話してしていただけますか?」

里帆さん:「私は中学2年の時から高校2年生まで保健室の先生に通告して、児童相談所に一時保護されるまで、実の父から性的虐待を受けていました。それまでは中学1年生のころから胸を触られたりですとか、太ももを触られるなど、そういったことはありましたが、そのあと実際に性交を強要されるということで、私としては拒否できない状況で、父から性交を受けていたような状態になります。

記者:「どういった思いできょう会見に?」

里帆さん:「私としては過去にあった父からされたことというのは変えられないことなので、自分の中で納得するしかないと思います。苦しいんですけど。ただ、父から性行為を受けた時、一時保護されて大学に行っていたときにやはり何度か自分の、親にも事情があったのかもしれない、そういったいろいろ納得しようと思ったんですけれども、やっぱり自分の中では納得できず、同じように性被害に遭った方、特に家庭内の性暴力は実質的に支配されているというか、親がいないと子どもは生きていけないので。そして、18歳を超えてしまうと児童相談所は保護してくれる対象ではないので、そんな中で自分で生きていかなくてはいけない。そういった自分を絶望しながらもなんとか生きる道を見つけて、その難しさを感じたので。いま家庭の中で性暴力に実際、遭っている方、過去に遭っていま苦しんでいる方、そういった方の何か力になれば、そういうふうに思って、いまこの場に立っています」

記者:「2つお伺いしたい。1つは精神科に通院、どんな症状で?もう1つは会見を開くことで被害に遭った方の力になりたいということですがお顔を出すことへのためらいや決意は?」

里帆さん:「1点目は、被害に遭っていた当時というのは自分の感情がないような、無気力感がありました。生きていたくない。自分を外から俯瞰したような。被害に遭った後に自分の中から感情がなくなってしまった。中学生だったので、勉強しなくてはいけなかったんですけど、思考することや暗記することが全くできない状況でした。ですから目に見える形では成績が以前より目に見える形でがたんと落ちてしまったり、思春期という時期だったが自分の感情がコントロールできないような感情の起伏が、普段は無気力ということもありますが、突然感情が表出してしまって暴れてしまったりとか、なんでそういうふうになっているのかというのは、まわりが実際は知らないので、ひどい思春期なのかなとか。精神的に理由があるかなとかわからないまま、家族としてはうまくサポートできなかったりとか。あとは肉体的な部分で言うとやはり朝起きられなくなったりですとか。どうしても夜、自分に対して加害をしてくる人が同じ家の中にいて、ゆっくり安心して眠ることができないので。眠ることはできるんですけど、安心して眠れずに日中、眠たいような状態だったりとか、そういうのが当時の状態です。
ですので、中学生、高校生の間も保健室の先生に助けていただいて、熱とかが出ているわけではないのですが、ベッドで休ませていただいて。学校では父がいないので安心して眠れる環境で、心と体を休息しながら過ごしていました。その当時は、張り詰めていたので、どちらかというと何とかやっていたんですけど、離れて、特に大学に進学した後の方が精神的な被害は大きかったかなと自分の中では思います。例えば、保育の勉強をしていたんですけど、虐待の実際のエピソードを聞いているうちにフラッシュバックしてしまって、授業に出られなくなってしまったりですとか、その場を退出してしまって、しばらく学校に行けなくなることもありました。あとは、ニュースなどで同じような被害に遭った人を電車で見ていると、電車に乗っていられなくなって吐きそうになったりということもありました。そのあと肉体的な部分で出たのは、いまも薬を飲んでいるんですけど、吐き気でご飯を食べられなくなる日もあります」

 ■自分の信念に基づいているから、隠れることはない… 

記者:顔も名前も出して被害を訴えるのは勇気が必要と思うが、その思いは?

里帆さん:「もちろんこういった顔出し、実名を出すことは社会的影響、日常生活に難しくなることに対して葛藤はありました。ですが、主人とも何度も話して私がなにか悪いことをしたわけではありませんので。性加害に遭っている人全員だと思いますけど。ですので、自分は悪いことをしていない、自分の信念に基づいてから、隠れることはないかな。自分が恥ずかしいわけではない。主人から何度も言ってもらって自信をもって、この場にいます。あとはこれまでの経緯としては、最初はこういった形ですと、父だけでなくどうしても親族に影響が行くことはわかっていたので、家族で円満に解決できることを私は一番望んでいました。ですので、何度か話し合いを重ねていたんですけども、私の望むこととしては父の反省を望んでいて、それを私が見られたなら、その場で許そうと、自分の中で納得できると思っていたんですけど、私にはそうは見えなくて、残念だけれどだったら、父と私ではなく別の形で反省できる形、話し合いをしていく中でなかなかどうしても親族としても、私をかわいい気持ちもあると思うんですけど、実際に被害のことを思うと恐怖だったと思うので…私の納得のいく形にはできないのと、実際に話し合ってみて思ったので。いま私がここで主人がサポートしてくれて、周りの方がサポートしてくれる環境というのはないと思うので、私のやりたいことができる環境がある私だからこそ、実名顔出しで皆さんの前にお伝えして少し社会が変われば、もうできればこういった被害はなくせるかな、私でできたら最後にしてほしい、そういう思いで実名顔出しに決意できたかな、そういう風に思います」

記者:「警察や検察に求めること、処分について。行政機関に家族間の性加害がなくなるような仕組みづくりを要望されるのか?」

里帆さん:「具体的な処罰というのは、私は法律に明るくないのでわからないですけど、ただ今は逮捕されている状況なので、ここまで来たからには起訴してほしい。そこがまず一つの思いです。あとの具体的なことというのは自分の中でわからないですけど、実際に自分が被害に遭ったことに見合う罰というのはないとは思うんですけど、少しでも自分が過去遭ったことに納得できるような、それくらいの罰を与えていただけたらいいかなと思います。

2点目の行政に関していえば特に、家庭内のことなので本当に証拠というのは出すのはまず難しかったかと思います。指紋があったり、毛髪があったりしても、特に不思議なことはないですし、そこの証拠のハードルを何か考えてほしい。難しいとは思うんですけど、そこは感じたのと。そのあとの精神的なサポート、児童相談所に行った後に、被害が終わったとしても心が癒やされるわけではないので、思い出して苦しみますし、かといってカウンセリングとか精神科というのも通うのもお金がかかりますから、そういったところのサポートがあればいいのかなと思いました。あとは生活のサポート、たぶん被害に遭って自立したとしても若いと思うので、なかなか金銭的な余裕だったりとか少しでも体調を崩して働けなくなると、先が不安だと思いますから、もう少し、家庭内で性加害に遭うと一般的な家庭の仲がいい方だと親に頼ったりですとか、そういったこともできると思いますが、なかなか難しいので不安に思うと思うのでサポートしていただきたいと思います」 記者:「ご職業や肩書は?」 里帆さん:「いまは家庭内で主婦をしております」

■自分が壊れてしまって無になったような…

記者:「被害に最初に遭った中学2年生の時の思いは?」

里帆さん:「実際に被害に遭った時というのは今振り返ると何も感じられなかった。というのは感情が悲しいとか、苦しいとか、未来に対して不安だとか、これからどうしていいかわからない、そういったいろんな一定の感情がたまってしまって、自分が壊れてしまうような感じで無になったような、自分から魂というのがあるかわかりませんけど、感覚としてはそういったものが抜けた感じ。しばらくは不安よりも絶望、いまはあまりそうは思わないですけど、当時はそれこそ中学生だったので、結婚とかそういったことができるのかなとか、自分は汚れてしまったのかなとか、そういったこともそのあとは考えましたし、誰かに、特に親族に知られてしまったら悲しむだろうと、だから自分が一生懸命隠さないといけないとか、でも助けてほしいとか、でも親族に助けてもらえなかったらどうしようとか、そういったいろんな、未来に対してこれからどうなっていくんだろうという不安もあったと思います」

■“自分をどう守ろうか” いつも不安にさいなまれていた…

記者:「加害者が家の中にいることについての恐怖や不安は?」

里帆さん:「ありましたね。本当に家庭内なので被害に遭った次の日に朝ご飯を親族、家族でダイニングテーブルを囲んで食べるんですけども、私の前に父が座るので、どういう顔していいのだろうかと。その隣には、ほかの家族もいますから、そこには何か、いつもとの違いを受けられないようにというか、いつもどおりで次の日に過ごさないといけない。言ってみれば、自分に対して、そういった性加害をしてきた人とご飯を食べるという通常だと考えられないと思うんですけど。それが家庭内の性暴力の実際というか。ほかの家族にも不安にさせないように、自分の前には自分に対して性暴力してきた本人が座っていて、普通に会話してきたりとか。きょう学校でどんなことがあったのとか。なんで答えないといけないのかなと思うんですけど、それでもほかの家族に不思議に思われないように一生懸命答えて。そこが苦しかった。家庭内なのでどうしてもずっとほかの家族がいるわけではない、本来であれば家庭ではそういったことはおきないので注意している家族もいませんし、いつ次、父と2人になるだろうか、2人になったらまた性暴力が行われるのだろうかとか、そういった不安の中で過ごしていて。できるだけ1人になろう、できるだけ対策をしようとは思うんですけど、中学生ながら何ができるのかわからない中で、必死に考えて、うまくいかないこともあって、その中で自分をどう守ろうか、そういった不安にいつもさいなまれていました」

■“一生隠さなくていいんだ”という安ど感…

記者:「一時保護された後の心境は?」

里帆さん:「まずは、一時保護された後はこれからどうなるんだろうという不安がありました。というのも、母が知ってしまったら私に対して怒るだろうかとか、悲しむだろうかとか、ほかの親族はどう思うだろうか、そういった不安もありましたし。自分が高校生だったのもあって、進路やこれからの未来はどうなるのか不安もある中で、一時保護の間は過ごしていたと思います。家に帰ってからは、もう家には来ないということで聞いていたので、終わったのかなという少しの安ど感。あとは周りの方に知ってもらって、もう無理に父と話したり、演技というか、一生懸命隠さなくていいんだという安ど感もありました。ただ、住んでいたのが家の真裏のアパートで、たとえば会社から帰ってくる車の音が分かったりですとか、用事があると家に来れる環境だったので、いつまたもしかしたら被害に遭うのかなと。でもそうではないだろうと。保護される前よりは恐怖はなくなったんですけど、家の近くに住んでいる、見える状態だったので、東京に行くまでの期間、特に不安だったなと感じます。

記者:「東京に行くまでばったり会ったりとかしたのか?」

里帆さん:「そうですね。ありました」

記者:「そのときは普通に話したのか?」

里帆さん:「家の裏なので、休みの日とか、自分とちょうど父が家をばったり出るタイミングで顔を合わせてしまった時は話さないですけど。ほかの親族がいるときに何度か、2こと、3こと交わしたこともあります」

記者:「父親の直筆の反省文や音声データは捜査機関に提出しているか?」

弁護士:「しています」

記者:「中学校2年から高校生まで8回、当時、メモとして残されたりしていますか?」

弁護士:「そのあたりも捜査に支障がありますので」

記者:「近年、性加害の告発がありますが、どのように見ているか?」

里帆さん:「私は家庭内の性暴力ですけど、大きなくくりで見ると、性暴力に過去遭った方というのが言いやすくなってきたのかなというのが特に注目して、大学生の間とか、高校生の間とか、少しずつニュースで確認していました。そういった前例があると、私も社会的に自分がもしかしたら悪かったのかなという思いもあったんですが、社会の方が、皆さんが悪くないと。加害者が悪いという意見も目に見えて、私としてはそういった前例の方が、私がここにいるのも後押ししてくれたというか。今後どうなっていくんだろう、もしかしたら自分は批判的なことを言われるんだろうといった不安も、ほかの方たちを見て、批判的なことはないなと、自分が悪いわけではないと、後押しをしていただいたなと個人的には思っています。特に私は、ただ見ていて、家庭内の性暴力というのは裁判とかは見ていましたが、実名顔出しでやっている方は私の見ていた中では少なくて、どうしても自分の大事にしたい親族にも影響が行きやすかったりとかもあるのかなと思っていた。ただ表に出てこないだけで、家庭内の性暴力は確実にあると思うので、特に私は家庭内の性被害に対して、どうして家庭内ので起きるのか、みなさん疑問に思っていると思うので、なんで起きたんだろうということを皆さんにお伝えできればいいなと思いました」

夫の福山佳樹さんに里帆さんへのサポートについて質問がありました。

佳樹さんは43歳、会計事務所を営んでいるといいます。

記者:「夫としてサポートすることについて」

夫・福山佳樹さん(43)​:「彼女が私に対して、死ぬ日を1日1日伸ばしてきたと出会った日に言っていました。それを聞いてよく私と出会うまで生きていてくれたなと、そんな思いでいっぱいです。あとはよくここまできょうまで頑張ってくれたなと思っています」

午前11時に始まった記者会見で、里帆さんは約1時間半後にわたり当時の苦しかった日々と今の心境を語りました。後半に続きます。

 

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