実父から受けた性暴力を告発するまで…(2024年3月15日『沖縄タイムス』-「大弦小弦」)

 実父から受けた性暴力を告発するまでどれほどの苦難を経たのだろう。中学2年から3年間にわたり性交を強要されたという福山里帆さん(24)が、顔と名前を出して被害を訴えた


▼母親の外出中に自宅で繰り返し性的暴行を受けたという(15日付社会面)。苦しく、悲しく「不安より絶望」だったと記者会見で語っている

▼誰かに助けてほしいと思いながらも、「信じてもらえないのではないか」「他の家族が知ったら悲しむ」と悩んだ。高2の時に保健室の先生に打ち明けたことを境に、性暴力はやんだ

▼2年前に父に加害を追及したが、謝罪の言葉を聞けなかったという。親族からはなかったことにしようと言われた。「死ぬ日を一日一日延ばして」生き、富山県警に父を告訴。今月、準強姦(ごうかん)容疑で逮捕された

▼実名で語ったのは苦しむ人の助けになりたいから。SNSに「同じような地獄を生きる誰かのために、私の戦いを記録します」と決意をつづる。彼女の思いがつぶされない社会にしなければならない

内閣府の調査では女性の14人に1人が無理やり性交された経験があると回答する。顔見知りからの被害が8割。被害者には時に「あなたにも落ち度がある」という心ない言葉も向けられ、声を上げづらい要因が積み重なる。社会が変わらなければ被害者はいつまでも救われない。(嘉数よしの)