経済界、選択的夫婦別姓導入を政府に一斉要望 1000人超の署名(2024年3月8日『毎日新聞』)

選択的夫婦別姓の早期導入を求める要望書を政府側に渡す経済同友会の大藪貴子・社会のDEI推進委員会副委員(左から4人目)=東京都千代田区で2024年3月8日午後5時52分、町野幸撮影
選択的夫婦別姓の早期導入を求める要望書を政府側に渡す経済同友会の大藪貴子・社会のDEI推進委員会副委員(左から4人目)=東京都千代田区で2024年3月8日午後5時52分、町野幸撮影

 経団連経済同友会など経済団体の代表者らは国際女性デーの8日、議員会館や各省を訪れ、岸田文雄首相らに宛てた選択的夫婦別姓制度の導入を求める要望書を手渡した。

 結婚後に夫婦が必ず同姓になることを法律で定めているのは世界で日本だけで、改姓は女性が約95%を占める。職場では旧姓を使うケースが一般化しているが、海外の出入国手続きでトラブルも生じている。また、研究者の改姓前の実績が正当に評価されないこともあり、経済界からは選択的夫婦別姓を認める民法改正を求める声が強まっている。

 首相の代理で各団体の要望書と企業経営者ら1046人分の署名を受け取った矢田稚子首相補佐官は「ビジネス界でこれだけの声が上がったということは画期的。首相にしっかり伝えたい」と応じた。

 この日は経済団体の代表者のほか、全国女性税理士連盟の会長らが参加し、法務省や外務省でも要望書を副大臣らに手渡した。

 企業経営者らの署名を募った「選択的夫婦別姓の早期実現を求めるビジネスリーダー有志の会」の青野慶久共同代表(サイボウズ社長)は「経済界を巻き込んで動かしたことは、失われた30年を取り戻す大きな一歩。最後まで諦めずに頑張っていきたい」とあいさつした。【町野幸】 

選択的夫婦別姓制度の早期実現に向けた要望

社会のDEI推進委員会
委員長 田代 桂子
大和証券グループ本社 取締役兼執行役副社長)
委員長 星野 朝子
(日産自動車 執行役副社長)
委員長 安渕 聖司
(アクサ生命保険 取締役社長兼CEO)

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 本会は、夫婦が自らの意志で姓を選択できる選択的夫婦別姓制度の早期実現について賛同を表明します。

 1898年(明治31年)の旧民法で定められた夫婦同姓制度は戦後も引き継がれ、今日では、民法第750条により、夫婦は婚姻時に一方の姓を選択する夫婦同姓が規定されています。しかし、現状は妻(女性)が夫(男性)の姓に変更するケースが圧倒的多数を占めています。また、明治ならびに現民法にて制度化された1947年(昭和22年)当時と異なり、家族形態や個人の価値観は格段に多様化しています。
 夫婦同姓による経済社会への影響としては、女性の職業活動上の不利益、行政や金融機関の変更手続きに伴う負担が挙げられます。こうした中で、旧姓の通称使用の拡大が進められてきましたが、旧姓併記に対応した仕組み・システムへの変更にもコストを要しています。また、旧姓の通称使用は国際的には安全保障上のリスク要因になり得ることから、グローバル化に対応した政策とは言えません。
 個人の尊重と両性の実質的平等、多様な家族形態を認める社会を実現するためには、選択的夫婦別姓制度を早期に導入することが必要です。これは社会におけるDEI(Diversity, Equity & Inclusion)の浸透を促進する一歩であり、政府に対しては以下の三点を求めます。

 (1)夫婦同姓を規定する民法750条を改正し、婚姻時、夫婦が同姓、または各自の婚姻前の氏を称することができる選択的夫婦別姓制度を導入する
 (2)同制度に対し、国民の理解を深めるための啓発活動を強化する
 (3)同制度の導入に向けたロードマップを策定し、公表する

 本会は、あらゆる人材が活躍できる「多様性ある、公正で、包摂的な社会」の実現を目指し、今後もさまざまなステークホルダーと協働しながら、社会のDEIを推進していきます。

以上