天皇陛下の64歳の誕生日を前に、皇居・宮殿の長和殿「石橋の間」で記者会見があった。陛下は能登半島地震での犠牲者に対する追悼の意と被災者への見舞い、そして被災地訪問への意思を示した。一方で丁寧に言及したのが、秋篠宮家の長男悠仁さまについてだった。天皇や皇族が発信する言葉は時間をかけて、ご本人によって丁寧に練られるものだ。陛下の会見に込められたメッセージを、象徴天皇制を研究する名古屋大の河西秀哉准教授が読み解いた。 【写真】思わず見とれてしまう!愛子さまや雅子さまのティアラとドレス
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能登半島地震や社会の情勢、皇后雅子さまの体調や長女愛子さまの進路など、今年の記者会見は印象に残る話題が多かった。そのひとつが、秋篠宮家の長男悠仁さまについてだろう。
宮内庁記者会からの3つ目の質問は、皇位継承順位2位で、今年成年を迎える悠仁さまの成長や期待についてたずねるものだった。
陛下は、小さい時から甥として成長を見守ってきた悠仁さまが、各地への訪問で人びとと交流し、少しずつ皇室の一員としての務めを果たしていることを頼もしいと感じた、と話した。
象徴天皇制に詳しい名古屋大の河西秀哉准教授は、陛下のこうした言葉にある種のメッセージを感じたと話す。
「確かに、悠仁さまの話題に触れたきっかけは、記者会からの質問でした。陛下はご自身が日ごろ感じる思いを込めたはずです。陛下は最初に、悠仁さまが公務に参加し出した様子について言及しています。悠仁さまは、これまでの近現代の天皇のように父親の背中を見て皇位継承者として学ぶ環境にはありません。しかし、天皇陛下の言葉は、悠仁さまが公務に携わり成長している様子を天皇も見守っていますよ、ということでしょう」
悠仁さまが高校に入学した2年前にも、「皇位継承者である悠仁さまへの期待」をたずねる質問が出た。しかし、事前に予定されていなかった関連質問だったためか、陛下の答えは「ぜひ実り多い高校生活を送ってほしい」といった程度にとどまった。
一方で今回の会見では、悠仁さまの私生活についても触れた。トンボや野菜の栽培、学校のバドミントン部の活動などについて「生き生きと話してくれます」と、現天皇が将来の継承者と交流をしている様子をさりげなく伝えている。
注目されている大学への進路については、「将来をしっかりと見つめながら実りの多い高校生活を」と言葉を締めた。
「天皇陛下は、質問の内容以上に皇族としての準備や私生活など細かいところまで答えています。世間では秋篠宮家への批判が集中しています。また『紀子さまは、皇后雅子さまや愛子さまを意識している』といったトーンを匂わせ、天皇家と秋篠宮家の分断をおもしろおかしくあおる記事も少なくない。両家は分断していませんよ、と柔らかに伝えているように感じました」
■秋篠宮家との交流を発信
天皇陛下は以前も、天皇家と秋篠宮家とのやり取りについて言及している。たとえば、即位し、天皇として初めての誕生日を迎えた2020年の会見だ。
皇室の少子高齢化や継承問題についての質問に対し陛下は、皇室制度や会話の内容についての言及は控えるとしながらも、「秋篠宮とは、折に触れ、いろいろな話をいたします」と、皇室の将来に向けて意見を交わしていることを明らかにしている。
また昨年9月、ご一家は都内で開催された「日本伝統工芸展」を訪ねた。案内役を務めた秋篠宮家の次女の佳子さまを、天皇陛下が「佳子ちゃん」と呼んだことが話題になった。
陛下は秋篠宮家との交流について、折に触れて世間にさりげなく発信しているものの、問題は世間の秋篠宮家に対する批判が一向におさまらないこの状況だ。 河西准教授は、秋篠宮家が悠仁さまを「秘密のベール」に包み過ぎている、と指摘する。
「高校生といえば繊細な年ごろですから、ご両親としてはそっとしておきたいというお気持ちもあるでしょう。一方で、いまの天皇陛下については、昭和の時代の上皇ご夫妻は記者会見などで、ユーモアを交えて浩宮さま(当時)のエピソードを話しています。秋篠宮家の広報戦略の領域ではありますが、もうすこし悠仁さまの情報をオープンにすることも、共感につながるのではないでしょうか」
悠仁さまは今春から高校3年生となり、進学先も注目される。同時に今年9月には18歳の成年を迎える。悠仁さまが担うものも、また大きくなりそうだ。
(AERA dot.編集部・永井貴子)