元朝日新聞記者でアフロヘアーがトレードマークの稲垣えみ子さんが「AERA」で連載する「アフロ画報」をお届けします。50歳を過ぎ、思い切って早期退職。新たな生活へと飛び出した日々に起こる出来事から、人とのふれあい、思い出などをつづります。
* * *
いわゆる「裏金問題」についてホント酷い話と思いつつ、しかし既に多くの方がコメントしており今さら言うことも思いつかずグズグズしているうちに時が経過。だがどうもスッキリしない。自分の中にこの問題への「小さくない違和感」があるのだ。だがその正体が掴めずモヤモヤしていたところ、先日新聞の投書欄を読み膝を打った。
夫と自動車整備業を営む女性からの投書である。夫の退職を機にゼロから修業・開業した自分たちの小さな商いと、政治家の金銭感覚の落差を綴ったものなのだが、私がハッとしたのは次の一文だ。「商いの先輩の『お金を追いかけると、お金も人も逃げていく』との言葉を胸に(中略)大切な車を整備してきました」
この「先輩」の言葉に私は唸った。これは真実である。長い間、私はそのことに全く気づかなかった。そしてもちろん必死にお金を追い続けお金も人も逃げていき、焦ってさらにお金を追いさらに全てが逃げていくというアホな人生を延々と過ごしていた。そのことに気づいたのは会社を早期退職するというアイデアを実行に移すため、人生で初めてお金について真剣に考え自分なりに試行錯誤を繰り返した末のことである。
つまりは、お金って単純じゃないのだ。取扱注意。うまく付き合わないと自分も周囲も不幸にする。たくさん稼ぐが勝ちなんてもんじゃ全然ない。お金をうまく扱うのには知恵と哲学が必要なのである。投書の「先輩」も、きっと痛い目に遭いながらその知恵を掴み取ったのだと思う。
要するに私はこの投書を読んで、今の日本を仕切っている政治家の方々は、どうもその知恵とは全く無縁らしいということに気づいてしまったのだ。今回も「政治には金が必要」というセリフを耳タコに聞いたが、ならばお金をたくさん集められる政治家ほど良い政治ができることになる。それはかつての、お金をたくさん稼げば幸せになれると考えていたアホな私と重なって見える。激動の時代にそのアップデートなき脳味噌の集団を恐ろしく思うのだ。
稲垣えみ子(いながき・えみこ)/1965年生まれ。元朝日新聞記者。超節電生活。近著2冊『アフロえみ子の四季の食卓』(マガジンハウス)、『人生はどこでもドア リヨンの14日間』(東洋経済新報社)を刊行
※AERA 2024年2月26日号
今回の内容は、途中なんの準備もせずに、もちろんフランスなんてできない状態で、フランスのリヨンに行って14日間滞在したという旅行記は、「現地でしっかりした、日本と変わらぬ生活をすること」。 それはつまり「周りの人としっかりコミュニケーションをとってつながること」。 日本語が通じない異国の地だと、その人の「在り方」稲垣氏は、その試行錯誤の中で「人とつながることの幸せの形」を言っているその様子が、稲垣氏独自の軽快な文章で表現されていて、笑わせられたり、ホロっとさせられたり……と、どんどん引き込まれていくうちに、最後は感動させられるものまた、エアビー(民泊サイト)の利用法を始め、ホストとのつきあい方や、フランスのネット事情、マルシェ(市場)の様子、買い物の仕方、カフェの様子など、海外の民泊を利用しようとする人や、フランス旅行をする人に参考になる情報も注目されている。