核のごみ処分 原発政策自体を問い直せ(2024年2月26日『信濃毎日新聞』-「社説」)

 お金と引き換えに問題を地方に押し込めるやり方を続けていてよいのか。根本から考え直すべきだ。

 原発から出る「核のごみ」の最終処分場選定調査で、北海道の寿都(すっつ)町と神恵内(かもえない)村で次の段階に進むことが可能との報告書案が示された。

 処分事業を進める経済産業省認可法人原子力発電環境整備機構(NUMO)がまとめた。

 次の段階へは知事や地元首長の同意が必要となるが、実現は見通せない。北海道には「受け入れ難い」とする条例があり、鈴木直道知事は反対の立場だ。

 ほかに候補地はなく、両町村で次に進まなければ選定作業は振り出しに戻る。問題解決の難しさが改めて浮かんでいる。

 調査は3段階ある。資料で地質を確認する文献調査に2年、ボーリング調査で岩盤の状態などをみる概要調査に4年、地下に施設を造って調べる精密調査に14年。合わせて20年の想定だ。

 文献調査に入った自治体には最大20億円、概要調査になるとさらに同70億円の交付金が入る。

 2町村が文献調査を受け入れたのは2020年。想定を超える3年以上がかかった。この間、全国では、長崎県対馬市で市議会が受け入れに意欲を示し、市長が熟慮の末応募しない判断を表明するという事案があった。

 さかのぼると、07年に高知県東洋町が手を上げたものの反対の声が巻き起こり、撤回に至ったこともある。過疎に悩む地域で誘致話が持ち上がり、住民が賛成と反対に分断される。そんな構図が今後も繰り返される恐れがある。

 核のごみとは、原発の使用済み核燃料を再処理する際に発生する廃液を固めた廃棄物だ。極めて強い放射線を出し続けるため、地下深くに埋めて数万年以上隔離する処分方法を採っている。

 だが、地殻変動の多い日本にはそもそも適地がないとの指摘もある。地学などの専門家有志約300人は昨年、安定した場所を選ぶのは不可能との声明を出した。

 この危険極まるごみをどう扱っていけばよいのか。簡単なことではない。真剣に打開策を探るにはまず、脱原発を決めて総量を確定し、その上で広く国民に問いかけていくべきではないか。

 日本学術会議は15年に出した政策提言で、地上の施設で50年「暫定保管」し、その間に議論を進めるよう提案。電力各社が保管場所を確保し、それを原発再稼働の条件とすることも求めている。いまからでも検討に値する。