近年、低年金の高齢者の生活がニュースなどで取り上げられる機会が増えています。また、老後資金形成のためiDeCoの重要性を主張する声も多いです。
【年金の早見表】老齢年金「厚生年金・国民年金」みんな月いくらもらってる?
こうした中で、おひとりさまの多くが将来の「お金」について悩んでいます。おひとりさまの中には高収入で貯蓄がしっかりできている人がいる一方、不安定な雇用形態で年収が低く、貯蓄がままならない人もいます。 現代社会では一人世帯の高齢者の貧困が度々ピックアップされているように、後者のおひとりさまの方が多いくらいでしょう。
本記事ではおひとりさまの老後資金に関する不安や現代の年金受給額の分布を確認した上で、年金の受給額が低いおひとりさまの生計の立て方を解説します。
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多くのおひとりさまが「老後の生活費」に不安を感じている
ジブラルタ生命保険株式会社「おひとりさまに関する調査2022」は20歳~69歳の未婚男女4700名(男性2350名 女性2350名)を対象に、おひとりさまに関する調査を行いました。 本調査では「自身の将来について、どのようなことに不安を感じるか」についても明らかにされています。
【図表1】で「老後の生活費」と回答した人は44.6%と最多となっています。半数近くの回答者が老後の生活費について不安を抱えています。
図表1
この結果には近年におけるテレビ放送やネット記事なども影響していると考えられます。高齢者の貧困問題や年金生活者の厳しい実態は、各種メディアから意識せずとも入ってきます。 こうした情報溢れる社会で生活していると、老後のお金に関することを常に考えてしまっても仕方ありません。
とはいえ、多くの人たちが老後の生活費に不安を抱くような経済事情におかれていることも事実です。特に、未婚者は既婚者よりも不安定な雇用形態や低年収を余儀なくされているという見方もあります。 おひとりさまの多くが働いていても十分な収入を得られない状況にあり、こうした状況が未婚、老後の生活費の問題にもつながっていきます。
毎月の年金受給額が3万円以下の人は少なくない
現役時代に会社員や公務員などで働いていた人は「厚生年金(国民年金の保険料含む)」に加入しています。厚生年金の受給者はどのくらいの年金を得ているのでしょうか。 厚生労働省年金局「令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」を参照し、確認してみましょう。
【図表2】の通り、男性と女性では年金受給額に差があります。男性の年金受給額のボリュームゾーンは15~19万円、女性については8~10万円となっています。 一方、年金受給額が3万円未満の人は男性が約5万7000人、女性が約7万4000人です。
また、現役時代に自営業やフリーランスなどで働いていた人は「国民年金」に加入しています。国民年金は厚生年金よりも受給できる金額が一般的に少なくなります。 国民年金の受給額のボリューム層は男女ともに5~7万円となっています。3万円以下の受給額の人も多く、男性は約27万9000人、女性は約94万2000人です。
図表2
【図表2】と【図表3】はいずれも既婚者と未婚者が一緒になっている統計で、現在よりも既婚率が高い時代に現役世代だった人たちです。 このため、低い年金受給額であっても、パートナーの年金などの収入で問題なく生活できている人も含まれています。
とはいえ、日本では一人暮らしの高齢者が年々増加傾向にあります。 内閣府「令和5年版高齢社会白書」によると、65歳以上の人口に占める一人暮らしの割合は令和2年においては男性15.0%、女性22.1%となっています。
図表3
年金だけで生活できないおひとりさまはどうなるの?
既婚者であれば、自分の年金が少なくてもパートナーや子どもに頼るという選択もあります。しかし、おひとりさまの場合、経済的に頼れる人がいないということにもなりかねません。 こうした場合に、第一に考えられるのが「働き続ける」という選択です。日本は少子高齢化による労働者人口の減少により、高齢者に門戸を開いている求人も多くあります。
時代によって若者や高齢者に対する見方は異なるものの、現在においては若者よりも高齢者を求める企業も少なくありません。 例えば、コンビニや飲食店などでは学校優先でシフトを決める学生よりも、柔軟に対応してくれる高齢者が好まれることもあります。
ライフワークバランスや個人の権利ばかり主張する若者も近年では多く、働くことの厳しさや高度経済成長期の働き方を知っている高齢者の方が自社に貢献してくれると考える企業も珍しくないようです。 年齢を重ねると体力面など問題が出てきますが、働くことで健康を維持でき、脳を活性化できるなどメリットもあります。
また、職場とのつながりがあれば、人と会話する機会を日常的に得られたり、支援につながったりすることもあります。 働くことが難しく、貯蓄もなければ「生活保護」の受給になるでしょう。高齢であったり、健康状態に問題があったりする場合、頼れる人がいなければ生活保護の受給は認められやすいはずです。
まとめにかえて
多くの人たちの不安となっている「老後の生活費」ですが、現代における年金受給額の分布を見ても厳しい状況がうかがえます。 今後は日本経済の低迷に加えて、若者の経済的理由による結婚離れやフリーランスの人気などが関係し、老後のお金に関する問題はさらに深刻化すると予想できるでしょう。
年金だけで生活できない場合、一般的なアドバイスは就業の継続になります。多くの企業が人手不足のため、年齢だけが理由となって採用が決まらないというケースは少なくなってきています。
また、仕事ができない事情がある場合は「生活保護」を受給することになります。生活保護の申請を躊躇し、栄養が不足したり、健康状態が悪くなったりすれば状況はより悪化します。限界を感じる前に相談することをおすすめします。
西田 梨紗