「教育勅語」否定しない閣議決定が問題だ(2024年2月24日『日刊スポーツ』-「政界地獄耳」)

★職員研修で教育勅語を使用している問題をただされた広島市長・松井一実は、21日の市議会本会議で、作られた時代背景や内容が戦争に利用されたといった歴史的な事実を説明しているとした上で、「現代の日本で通用することを検証して良いものがあると伝えている」と答弁し、使い続ける意向を示した。この問題で自民党衆院議員・杉田水脈は「なに1つおかしなことは書かれていません」とし、「主権在君」「神話的国体観」に根本理念があり「教育勅語を家庭や学校教育でしっかり教えることが一番の近道。そのためにも学校の先生にこそ、知ってほしい内容」とした。

教育勅語は親孝行、兄弟仲良く、夫婦仲むつまじくなど、14の徳目が示されている。その中核は「万一危急の大事(戦争)が起こったら、大義に基づいて勇気をふるい一身を捧(ささ)げて皇室国家のためにつくせ」、つまりいざという時は天皇のために命をかけて戦いなさいという意味である。日清戦争の4年前、1890年に発布され、1948年、6月19日に衆院で「教育勅語等排除に関する決議」が、参院で「教育勅語等の失効確認に関する決議」が行われた。

★17年、「森友学園」が経営する幼稚園が園児に「教育勅語」を暗唱させ話題となった。国会では防衛相・稲田朋美が「教育勅語の精神である親孝行や、友だちを大切にすることなど、核の部分は今も大切なものとして維持しており、教育勅語の精神は取り戻すべき」と述べ、文科相松野博一は「道徳を教えるために教育勅語のこの部分を使ってはいけないと私が申し上げるべきではない」と2人の安倍派閣僚は肯定的に扱った。今となっては安倍派議員に道徳うんぬんと言われるのも片腹痛いが、同年3月31日、安倍政権は「憲法教育基本法に反しないような形で教材として用いることまでは否定されることではない」と閣議決定した。つまり松井の方針に問題はない。17年には大きな問題になったが今ではとがめる声も小さいが、問題なのはこの閣議決定だ。(K)