松本人志問題で大議論!性行為後に「行為の意味を変える」ことはありなのか(2024年2月22日)

● 6年以上にわたって 無罪の人間がキャリアを追われた

 ちょっと検索すれば、すぐにわかる問題だが、アメリカで起きた「#metoo」運動などで、確かに権力を利用した「極悪な性加害」の実態が明らかになったのは事実だ。

 しかし、ハリウッドで実力派俳優だったケビン・スペイシーは、2001年から2013年の間に4人の男性に性的暴行をしたなどとして計9件の罪で訴追されていたが、「12時間以上の審議の末、サザーク刑事法院の陪審団は、性的暴行の罪7件、同意なしに性的行為に及んだ罪1件、同意なしに挿入を含む性行為に及んだ罪1件の計9件の罪状について、無罪評決を言い渡した」(BBC)。

 実に6年以上にわたって、無罪の人間が、キャリアを追われたのである。「権力勾配」の問題を持ち出すだけでなく、権力がある側が必要以上に過剰な攻撃にさらされることを踏まえる必要もまたあるのではないだろうか。

● 賠償金に何億円もかかるのであれば ジャニー喜多川氏の性犯罪は明るみに出ていない

 橋下徹氏は週刊文春電子版(1月31日配信)で、「名誉毀損認定の際の賠償額はもっと引き上げるべきです。アメリカでは、先日、トランプ前大統領に約123億円もの名誉毀損の賠償額を負わせる判決がありました」という。橋下氏のこの意見に追随する有識者も多い。

 しかし、まず、大統領と報道機関をごっちゃにすべきではない。さらに、大事なのは真実であり、賠償金ではない。賠償金を上げれば、当然、報道機関は報じる自由を失う。賠償金が何億円もかかるものであれば、ジャニー喜多川氏の男児性虐待問題がここまで明るみに出ているとは思えない。橋下氏は公職から離れているというのに、言論の自由表現の自由の大切さが理解できないのだとすれば、残念だ。

 「文春がやりすぎ」だという有識者も多かったが、むしろ、文春が取材した事実を隠していることの方が私は怖いと思う。真実は可能な限り、私たちの目に見えるテーブルの上に出してほしい。権力者、公職者、オピニオンリーダーが相手ならなおさらだ。

● 男性も女性も性的な欲求の パターンがかなり似ている

 話がそれたが、まとめに入ろう。「私はこう考える」の一連の特集や記事で一番印象に残ったのが、FLASH(2月6日号)に掲載されたフェミニスト田嶋陽子氏のコメントだ。

 <「女はただの“穴と袋”だ」と見ているんでしょう。時代遅れですよ>

 報道されているように、その日、その場で、松本氏が性行為を始めたのが事実ならば、当時の松本氏の劣情を表す、最も適切な表現だと感じた。ただ、田嶋氏のコメントは、松本氏にのみに批判の矛先があるようにも思うが、「愚かな男」すべてに向かっているようにも見える。

 確かに、男は愚かな動物である。しかし、同時に、女性だって、男性を性的な対象としてみることもあるだろう。米ニューヨークタイムズ紙(2023年10月15日)では、『男性の自慰行為の頻度が女性よりも高いことを示唆するデータはあるが、女性がセックスを欲していない、あるいは男性が常に欲しているというのは事実ではない』として、最新の研究調査「Does Sexual Desire Fluctuate More Among Women than Men?」(エミリー・A・ハリスら)の中から「男女の欲望の変動は一週間を通じて非常に似ていることがわかった」と結論付けている。同研究データでは次のようなことも述べていた。

 「よく、男性の性的経験は生まれつきの、生物学的な衝動が原因で、常に性欲が高いと言われます。それに対して、女性の性的な感じ方は、人間関係や社会的な状況に応じて変わると見られがちです」

 「私たちの研究でわかったのは、短期間で見ると、男性も女性も性的な欲求のパターンがかなり似ているということです(ただし、長期間で見ると、女性の欲求の変動がもっと大きい可能性があります)。男性も女性と同様に、性に対する欲求が変わり、ストレスを感じるなどの一般的な感情状態や、パートナーとどれくらい親密に感じるかなどの、関係に関する状態によって影響を受けます」

 「刹那的な性衝動」は男性だけに起こるのではなく、また、性行為の相手との「関係に関する状態」によって性に対する欲求が変わるというのは女性に限った現象ではないようだ。

 フェミニストに、「おまえは『女をただの“穴と袋”だ』としか見てないだろう」とののしられれば、震えるしかないが、男女の性差を論じていく上で、科学的な知識は不当な偏見を吹き飛ばしてくれるだろう。

小倉健一

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