広島中央署で勾留中の警視正死亡、監視強めていたはずがなぜ? 事件の真相は闇に 管理体制の検証不可欠(2024年2月19日)

岩本被告が勾留されていた広島中央署

 広島中央署の留置施設で意識不明の状態で見つかり、死亡が確認された岩本幸一被告は、同署が「特別要注意被留置者」に指定し、監視を強めていたはずの人物だった。法廷審理は打ち切られ、事件は全容解明に至らない見通しだ。県警には再発防止に向け、当時の管理体制や原因究明のための徹底した検証が欠かせない。

 

送検される警視正

 県警留置管理課によると、岩本被告が自殺を図ったとされるのは留置施設にある単独の居室のトイレ内。扉と壁で仕切られ、巡回する署員は居室の外からは見えないという。県警は生存を確認した最後の時間や当時どのように巡回していたかは「調査中」として明らかにしていない。

 特別要注意被留置者は、自殺の恐れがある場合などに警察署長らが指定する。指定後は容疑者、被告の状態に応じて巡回を増やしたり、自殺の兆候がある場合などは24時間の対面監視をしたりする。県警は岩本被告について24時間の対面監視の対象ではなかったとする一方、巡回の頻度など具体的な対応は「保安上答えられない」としている。

 不同意性交などの罪に問われた岩本被告は1月25日の広島地裁での初公判で「性交はしていない」などと起訴内容を否認し、無罪を主張した。別の女性2人を被害者とする事件でも追起訴されているが、公判などは終了し、真相解明の機会は失われることになる。

 甲南大の渡辺修特別客員教授刑事訴訟法)は「死亡の結果、被害者は救済されないままとなる。裁判による真相解明のためにも自殺は防がなければならない」と指摘している。