また裂き状態に陥った連合、政治介入を自制すべき(2024年2月17日『日刊スポーツ』-「政界地獄耳」)

連合会長・芳野友子氏

★4月28日投開票の衆院補選は、折からの政治とカネの問題を色濃く反映する選挙になる。13日、鳥取県米子市で開かれた連合の中国ブロック代表者会議で、連合会長・芳野友子は衆院島根1区の補選について次のように発言した。立候補の意向を表明している立憲元職の亀井亜紀子に推薦を出しているが、「連合としては共産党と一緒に戦うことはありえない」「候補者調整は政党が考えることなので、連合が踏み込むというのは難しいが、連合の考え方は明確なので、それを踏まえたうえで候補者調整をやったときに、支援できないこともありますし、推薦取り消しもあります」と相変わらず、連合の一方的立場だけを訴えた。

官公労(総評系)の左派と民間労組(同盟系)の右派の対立など4組織を一本化して、労働者の力を示そうと1989年、連合は発足した。ところが17年、連合が支援していた民進党希望の党との合流騒動を経て、立憲民主党と国民民主党に分裂。政党が左派と右派に分かれたことをきっかけに、連合はまた裂き状態に陥った。芳野の立場はこの分裂を食い止め、連合としてのまとまりを最大限発揮したいというもの。

★だが、機械・金属製造業の中小企業の労働者で組織されるものづくり産業労働組合(JAM)出身の芳野は、民社党由来の右派教育からしか労働運動を見ることができず、大きな塊を模索し俯瞰(ふかん)する力に欠ける。今も官製春闘ともいえる協調路線に乗じて経団連自民党、官邸とタッグを組む。それなりの規律や緊張が生じるべきだが、「自民党への政治とカネへの苦言も甘く、デレデレした印象」(同盟系労組幹部)と評判が悪い。ある野党議員は「政治の水面下の動きに少し黙っていてもらいたい。参院では組織内候補が連合の顔色ばかりうかがっている。政治家や政党を支援団体の連合が支援をたてにひれ伏させる文化がなじまない。連合はもっとずっしりと構えてもらいたいが、今の連合が政治の動きを止めることになっていることに芳野自身が気付いていない」と厳しい。(K)