(ブルームバーグ): 日本のエンターテインメント業界におけるガバナンス不全が、著名芸能人が起こしたトラブルによって再び顕在化した。企業統治(コーポレート・ガバナンス)の質向上が求められる中起きた一連の騒動で、批判が集まっているフジテレビ親会社の株価は低迷が続く。
同社は17日午後3時から記者会見を実施する予定だ、と日本経済新聞社などが報じている。フジテレビの広報担当者は、会見時間など詳細について明らかにせず、放送記者会に加盟している媒体に出席を限ると説明。このタイミングでの会見開催の意図について、定例の社長会見がもともとある中で、要望があり前倒したと述べるにとどまった。
昨年12月に一部週刊誌が、元SMAPメンバーで現在はテレビ司会者として活躍する中居正広氏の女性とのトラブルを報道。フジテレビ社員の関与も報道に含まれており、報道後に同社は否定コメントを出したほか、外部の弁護士を入れた調査を実施し、結果を踏まえて適切に対応していくと発表した。ただ報道前の昨年12月19日と比べ、親会社のフジ・メディア・ホールディングス(HD)株は約9%も値を下げ、テレビ東京HDの5.4%の下落、日本テレビHDの7.5%の下落を上回る。
スマイルアップ(旧ジャニーズ事務所)の創業者であるジャニー喜多川氏による性加害問題を長年見て見ぬふりをしてきたとして、2023年にはテレビ局が相次いで社内調査を実施。フジテレビも過去の対応や報道を検証し、謝罪していた。
「今回の件を受けて、広告主たちがテレビに広告を出すと自分たちの評判が落ちることを嫌気して広告を控えることを市場は懸念しているのだろう」。放送業界を担当する東海東京インテリジェンス・ラボのアナリスト、山田健三郎氏はこう話す。また、「一部記者向けの会見というのは印象はあまり良くない。株主を軽視している姿勢と思われかねない」と付け加えた。
ダルトン・インベストメンツ系の物言う株主(アクティビスト)であるライジング・サン・マネジメント(RSM)は15日、親会社のフジ・メディア・ホールディングスに第三者委員会の設置を書簡で要請。調査と改善策の提示を求めていた。RSMのポール・フォルクス・デイビス会長は、書簡でコーポレート・ガバナンスに深刻な欠陥があり、一貫性と透明性の欠如は、「株主価値の毀損に直結する重大な問題」と指摘した。
日経新聞が17日、ダルトンの共同創設者であるジェームズ・ローゼンワルド氏が、フジメHDのコーポレート・ガバナンスに対する懸念が払拭されない場合、同社の年次株主総会に提案を提出する予定であると報じたことを受け、フジメHD株は同日上昇した。
また実業家の堀江貴文氏は17日昼にX(旧ツイッター)に、フジメHD株を取得したと投稿していた。堀江氏はライブドア社長時代に、フジテレビへの影響力を行使しようと当時同社の子会社だったニッポン放送株を約35%取得した経緯がある。
東海東京インテリジェンス・ラボの山田氏は、ガバナンスに関する懸念が解消されれば、放送事業の回復や配信関連収入、不動産事業からの安定した収益を背景に、株価は回復する可能性があると述べた。
--取材協力:我妻綾.
フジテレビの港社長は、終始険しい表情で会見に臨んでいました。
ピリピリとした雰囲気の中、記者からの質問は止むことがなく、会見は2時間近くに及びました。
中居正広さんと女性とのトラブルをめぐっては、一部週刊誌で、フジテレビの社員が、トラブルのきっかけとなった食事会に参加する予定だったにもかかわらず、直前にキャンセルしたなどと報じられています。
フジテレビの港浩一社長は、会見でまず、「現在まで弊社から説明が出来ていなかったことをお詫び申し上げます」と謝罪しました。
食事会への社員の関与について、港社長は、改めて報道を否定したうえで、第三者の弁護士を中心とする調査委員会を新たに設置し、事実関係を調査することを明らかにしました。
フジテレビは、2023年6月にトラブルを把握し、女性の人権や心身の安全を最優先に対応してきたということですが、その後も、中居さんが出演する番組の放送を続けたことなど一連の対応が正しかったのかどうかについても調査委員会による調査が行われるということです。
また、港社長は、女性に向けてのコメントを求められると、「活躍を祈ります」と述べたうえで、「女性に思うことがあるのであれば、真摯に受け止めたい」と話しました。