「大学は何も知らなかった」はおかしい…!日大陸上部<不正徴収問題>、被害者の現役学生が抱く「強烈な違和感」(2024年10月22日『現代ビジネス』)

監督から虚偽の説明
キャプチャ
日本大学本部(写真:現代ビジネス)
日本大学の重量挙部の監督が、奨学生から免除されているはずの入学金・授業料など学費を不正に徴収していた問題。同大が調査した結果、陸上競技部、スケート部でも同様の不正徴収があったことが明らかになった。日大によれば、陸上競技部では4143万円、スケート部では約2336万円あまりの被害が生じていたという。
前編記事『日大陸上部が奨学生から439万円をダマし取っていた…!「なぜ母子家庭の我が家をターゲットにしたのか」<被害者が怒りの告白>』では、不正徴収されていた陸上競技部OBの「怒りの声」を紹介したが、学費をダマし取られていたのはOBだけではない。現役の学生Bさんもその一人だ。
「籍を置いているため不利益が生じることも考えられますが、大学側の対応には納得できない」として、Bさんが取材に応じてくれた。
「9月中旬に大学側から『陸上競技部における不適切な金員徴収のお詫びと返金手続きの御案内について』という文書が届き、初めて学費をダマし取られていたことに気づきました。
私の場合、もともと奨学生ではなく普通に学費を払っていました。ただ、大学3年時に好成績を残せたことを受け、陸上競技部の井部(誠一)監督から『頑張っているな。成績を評価して、4年時の施設費(約10万円)を免除してやる』と言われました。
ところが、実際は4年時の前後期の学費も免除の対象になっていたのです。
3年までは在籍する学部から振込用紙が届き、指定された口座に振り込んでいました。しかし、奨学生になった途端、監督名義の口座が記された学費納入の案内が郵送で届き、その口座に学費を振り込む形になりました。
疑問に思った母親は大学の会計課に『なぜ振込先が学部ではなく監督の口座なのか』と問い合わせましたが、『こちらではわかりません。直接監督とやりとりしてください』と取り合ってもらえませんでした。
結局、余計なことを言うと息子の立場が悪くなるかもしれないと考え、母親は監督に確認することはできませんでした」
一人でも多く優秀な子を入学させるため
9月中旬に陸上競技部の不正徴収が発覚した後、Bさんの母親は改めて不正徴収問題の窓口になっている日本大学競技スポーツセンター事務局に問い合わせた
「本部の職員という担当者の回答は『(振込先が監督の口座になっているとは)まったく知らなかった』『本来、学費は学校に収めることになっています。監督が学部の会計課に振込用紙を取りに行き、保護者に送付する。それが行われていなかったとは……』というもの。終始『悪いのは監督。大学は何も知らなかった』という態度だったとのことです。
教育機関においてこんないい加減なことがあるのか。母親は怒りを通り越して、呆れていました」
金銭面の不透明さについては、以前から陸上競技部内で問題になっていたという。
「先輩によると、ここ6、7年の間、部費の会計報告がなかったそうです。昨年、部員から『会計報告を出さないのはおかしいのではないか』という声が出て、井部監督がようやく決算報告書を出してきましたが、適当に作成したようなシロモノであり、さらに部員の怒りを買いました。
今回の不正徴収について、大学は『奨学生ではない部員の学費や施設設備資金に充てられており、幹部の私的使用は認められていない」と説明しています。不正徴収発覚を受け、母親が問い合わせたときも、スポーツセンター事務局の担当者は『一人でも多く優秀な子を入学させるための行為だったようです』と弁明していました。
奨学生から本来納入しなくていいお金を入金させ、そのお金で新たに学生を取ることは普通なのでしょうか。部の強化のための行為だったという言い訳は通用しないと思います」
陸上部監督を直撃
Bさんは「なぜ自分が不正徴収のターゲットになったのか知りたい」と訴える。
「私は無名校の出身であり、陸上競技部には高校のOBもいません。つながりがないから狙い撃ちされたのかな、いう思いです。
これは詐欺ですよね。まさか大学にダマされるとは思いませんでした。学費を払ってくれた両親も同じ思いです。
母親はスポーツセンター事務局の担当者に『今後、学生や保護者への説明会を予定しているのか。ぜひ開催してほしい』と求めましたが、『いまのところありません』との回答でした。
大学は不正徴収した分に加え、遅延損害金を加えた額を返金するとしていますが、返せばいいという問題ではありません。ちゃんと説明してほしい」
Bさんは練習場所で異常な光景を目のあたりにして困惑している。
「当事者である監督、コーチは何食わぬ顔で競技場に来て指導しています。謝罪も説明もありません。どういう神経をしているのか。理解できないというか、その感覚が気持ち悪い。恐怖です」
取材に対し、同部の井部監督は「本部に連絡してください。そう言われておりますので」と繰り返すのみだった。
一方、10月15日に質問書を送ると、日大の広報担当者は次のように回答した。
納得できる説明をしてほしい
――授業料などが免除されている陸上部の学生から不正徴収した金銭の使途は?
「9月18日付け『重量挙部事案の対応及び悉皆調査のご報告とお詫び』において、『主として奨学生でない部員の授業料・施設設備資金等の本学への納付金の半額・全額ないし一部等に充てられており、幹部の私的使用は認められていません』と公表したとおりです」
――返金のために大学側が立て替えた金銭は、陸上部の幹部に請求するのか。また立て替え金について、どのように会計処理するのか?
「関係した幹部については、さらに調査を継続して、背景等も踏まえて、厳正に責任追及を行います。立替金については、回収可能性の判断を含め、独立監査人と協議したうえで適正に会計処理する予定です」
――不正徴収に関与した陸上部幹部の人数、また不正徴収に関与していた陸上部幹部への処分は?
「関与した幹部の範囲については、保護者からの聞き取りも含めて、調査を継続中です。関係した幹部については、さらに調査を継続して、背景等も踏まえて、厳正に責任追及を行います」
Bさんはこう訴える。
「私は覚悟をもって行動しています。大学はこれ以上裏切らないでほしい。きちんと調査して、納得できる説明をしてほしい」
Bさんの言葉通り、返金すればいいという問題ではないことは明らかだ。被害に遭った学生および保護者の切実な声は大学側に届くだろうか。

2024.9.18
重量挙部事案の対応及び悉皆調査のご報告とお詫び
1 ご報告と改めてのお詫び
 重量挙部の不祥事事案について7月12日以降の対応についてご報告申し上げます。
 併せて進めてきた全競技部を対象とした悉皆調査において、大半の競技部で不適切な徴収事例がないことが確認されるとともに、現時点において、2競技部の幹部による奨学生部員・保護者からの免除されたはずの納付金相当の不適切な徴収事例が認められました。
 被害を受けた部員・元部員・その保護者のみなさまに本学として深くお詫びし、返金手続のご案内を申し上げます。本学に対する社会の信頼を裏切ってきたことに関して、改めて本学として深くお詫び申し上げます。不祥事の根を絶ち切り、改善改革を進めていく決意であることを申し上げます。
 なお、関係競技部の部員らには一切非はありませんので、競技部の活動はこれまでどおりに継続してまいります。
2 重量挙部事案の対応の経過報告
 ⑴ 電話相談
  7月12日から約1か月間にわたり、相談窓口(電話相談)を設置し、重量挙部の卒業生を中心としてのべ79件(同一人物からの複数回の架電を含む)の電話相談に対応してきました。
 ⑵ 被害金額及び被害回復の実行状況
  重量挙部に関しては、過去10年以内の部員・保護者の被害金額は合計3685万円であることが確定し、本学では、この対象者全員に対して、返金日までの遅延損害金を付けて、9月10日時点で、47人に対する返金を完了しています。なお、残り1人については、返金対象者からの振込口座の指定を待っているところであり、指定があり次第、速やかに返金作業を完了致します。
 ⑶ 11年以前の被害の調査及び返金
  11年以上前の卒業生の方々からも、不正な請求がされていた疑いがあるというお問い合わせや相談をいただき、これまでに寄せられた情報を元に、顧問弁護士において調査・判断をして事実関係が確認できた方には、すでに返金手続きを進めています。
 ⑷ 責任追及の実行について
  同部幹部らについて、責任に応じた厳正な追及を行っております。遺憾ながら、具体的にどのような法的手続きをとっているかについては、手続きの妨げになるおそれがあるために、現時点での公表を差し控えざるを得ないことをご理解いただければ幸甚です。
3 悉皆調査のご報告
 ⑴ 奨学生・保護者から不適切な徴収が認められる事例ないしさらなる精密な調査が必要とされる事例
  ア 現時点で確認できるかぎり少なくとも陸上競技部は10年間で、短距離部門6名、走幅跳等の跳躍部門14名、男子の円盤投などの投擲部門5名、スケート部は7年間でアイスホッケー部門29名の奨学生部員・保護者に対し、2競技部の幹部において、なんらの説明もしないままに、奨学生として免除された納付金の半額・全額ないし一部の当該競技部への振込を求めて徴収するという不適切な事例が幹部らの自らの申告又は幹部らからの聴取により判明しています。
  イ また、バスケットボール部については、現時点では、一部の保護者について徴収の適否を判断するうえで保護者の理解内容についてさらなる精密な調査検討の必要な状況にあります。
  ウ ただし、弁護士の調査によっても、いずれの場合も、主として奨学生でない部員の授業料・施設設備資金等の本学への納付金の半額・全額ないし一部等に充てられており、幹部の私的使用は認められていません。
  エ 被害のない奨学生部員の確定
女子のやり投を含めて上述以外の陸上競技部及びスケート部の奨学生の部員については、免除された納付金相当の金額の当該競技部への振込の事実がないことが銀行口座で確認され、不適切な徴収がないことが確定しています。
 ⑵ 保護者の了解が認められる事例
  女子柔道、自転車部及びスケート部フィギュア部門については、奨学生として免除された納付金額の一部を当該競技部へ振込んでいた事実が認められるものの、弁護士による調査においても、幹部及び現時点までに聴き取りできた部員・保護者からは、免除された納付金の一部の当該競技部への振込に関して了解していた旨の供述があり、現時点では不適切な行為はないものと判断できております。使途は、⑴ウと同様です。
 ⑶ 奨学生として免除された納付金額の当該競技部への振込の不存在事例
  相撲部、馬術部、射撃部については、当該競技部が代行して部員の納付金を学部へ振込んだ事実は認められたものの、すぐに支払いができない学生に代わって幹部が個人的に立替払いをしたなどの理由があり、奨学生・保護者から奨学生として免除された納付金額の当該競技部への振込の事実は存在せず、現時点までの調査において、不適切な事実はないものと判断できております。
 ⑷ 代理納付の不存在事例
  その他の25競技部について、そもそも競技部関係者が学部に部員の納付金の払込用紙を取りに来た事実がなく、競技部が部員を代理して納付金を学部へ振込んだ事実はないことが調査により確認されており、現時点までの調査において、不適切な事実はないものと判断できております。
 ⑸ 調査の継続と返金の速やかな実行
  いずれの場合も、今後の調査により、被害が認められ、被害金額が確定した場合には、被害者全員に対して、速やかに返金日までの遅延損害金を付けて、返金を実行します。
 ⑹ 関係者の責任について
  関係した幹部については、さらに調査を継続して、背景等も踏まえて、厳正に責任追及を行います。
4 再発防止策の実行について
 前回本年7月12日のホームページでの公表の際に申し上げたとおり、令和7年度入試(令和6年度実施)からは、すでに本学の入試制度全般の改革が実行されたことから、学費納入の手続きは改められ、競技部が納付金を代理して受領することができない制度に改正されています。
 また、昨年度から本学として進めている競技部の会計管理の刷新を含めた競技部の改善方策をさらに浸透させて、再発防止に注力致します。
5 相談窓口・問合せ先
 競技部の現部員・部員であった方・その保護者で、被害を受けた可能性のある方は、以下の電話番号に御連絡ください。
 お問合せ時には、競技部名、お名前、卒業学部、学科、卒業年を伺いますので、御了承ください。
 なお、弁護士が対応する時間も設定致します。
 受付時間
 平日 午後1時~午後5時
 電話番号 03-5275-9887
6 今後の報告
 不適切な徴収が認められた件につきましては、2、3か月後を目途に調査結果をホームページに掲載して報告致します。
                                   
令和6年9月18日
  日 本 大 学