◆歓楽街ラスベガスは中南米系労働者が6割
「労働者の味方はハリス氏」。10月でも気温が35度に達し、強い日差しが照り付ける砂漠地帯のラスベガス。地元の料理人組合「ローカル226」に加盟する中南米系の女性らが住宅街を回り、ハリス氏の政策をアピールしていた。
組合は「州で最強の政治勢力」とされ、戸別訪問は2年前の中間選挙でも上院の民主候補を勝利に導いた。「料理人やウェイター、清掃員を動員している。接戦こそ組織力がものを言う」。新型コロナウイルス禍のバイデン・ハリス政権の経済対策を評価する幹部、テッド・パパジョージさん(63)が話す。
コロナ禍で大打撃を受けたラスベガス。サービス業を支える中南米系の失業率は特に高く、一時は30%を超えた。現在は5%台まで持ち直したが、一部には「コロナ前の活気はない」との不満もくすぶる。
◆トランプ氏は過去2度とも僅差でネバダを落とした
大衆の声に敏感なトランプ氏は6月、ラスベガスでの集会で「チップ非課税を即実行する」と宣言した。チップ労働者の給与水準は一般の半額程度との調査結果があり、チップ収入で補う人が多い。しかし課税対象のため、生活を圧迫するとの声が根強いためだ。
トランプ氏は2016、2020年の選挙で、同州を僅差で落とした。主張する厳格な不法移民対策を支持する中南米系の以前からの住民はいるが、出口調査で3割程度だった中南米系の得票率の低さが敗因の一つとされる。
◆大胆な減税プラン連発で巻き返しに躍起
逆転の切り札ともいえるチップ非課税をハリス氏が8月に表明すると、トランプ氏は盗人扱いして批判。同州ナイ郡の共和党支部議長のレオ・ブランドさん(40)も「副大統領として減税をしなかった。トランプ氏の威光を奪おうとしている」と非難する。
ただ、メキシコ移民でカジノ労働者の父を持つ民主党のネバダ州議会上院議員のファビアン・ドニャーテさん(28)は「料理人組合が何十年も前から訴えていた政策だ」とくぎを刺す。ハリス氏は組合が求める最低賃金の引き上げも公約にしており、パパジョージさんは「トランプ氏に計画性はない」と加勢する。
大統領返り咲きに執念を燃やすトランプ氏はその後も残業代の非課税を公約に追加。民間団体が9月に発表した世論調査では同州の中南米系の支持率は34%で、56%のハリス氏にリードを許したが、大胆な減税プランで巻き返しに躍起だ。