第50回衆院選は15日公示される。与野党の7党首は12日、日本記者クラブ主催の討論会に出席し、自民党派閥の政治資金パーティー裏金問題への対応や経済対策などを巡って論戦を交わした。野党各党は「政治とカネ」の問題を厳しく追及していく考えを強調。石破茂首相(自民党総裁)は、日米地位協定改定や選択的夫婦別姓の導入について前向きな姿勢を示し、後退が指摘される「石破カラー」をアピールした。
首相は、安全保障や人口減少、物価高対策などの課題を挙げて「日本のあり方を根底から変えていく」と強調。「日本創生」をキーワードに掲げて衆院選を戦う考えを示した。
党総裁選で繰り返し訴えた日米地位協定の改定については「具体策と合わせてこれから党内で議論する」とした上で、「必ず実現したい」と踏み込んだ。総裁選で導入に前向きな姿勢を示した選択的夫婦別姓については「結論を出す」と明言。一方、時期については「いつまでも(議論を)引き延ばすことはしない」と述べるにとどめた。
立憲民主党の野田佳彦代表は「政権交代」を掲げた。首相就任から8日後の戦後最短での衆院解散となったことについて「裏金隠し解散だ」と批判。「自民党のトップが代わり、首相が代わっても政治は変わらない。政権交代こそが最大の政治改革だ」と支持を訴えた。
日本維新の会の馬場伸幸代表は「もう一度輝く日本に再生し直すためには、政治が変わらなければならない」と強調。「今自民党がやっている古い政治を打ち破って新しい政治を始めていく」と語った。
公明党の石井啓一代表は、「徹底した政治改革」を掲げた。先の通常国会で最大の焦点となった政治資金規正法の改正で与党内の議論をリードした実績を強調。自民が「将来的な廃止も念頭」との表現にとどまる政策活動費の廃止を求めた。
共産党の田村智子委員長は「裏金を暴き、自民党を徹底追及してきた」と強調。経済政策では「賃上げと労働時間の短縮」を訴えた。国民民主党の玉木雄一郎代表は「税金と保険料が高いので、若い人たちの手取りが増えていない」と指摘し、所得税の基礎控除と給与所得控除を計103万円から計178万円に引き上げるなどと述べた。れいわ新選組の山本太郎代表は「大胆な経済政策が必要だ」として、消費税の廃止や社会保険料の減免などを主張した。
討論会には、現職の国会議員5人以上▽直近の国政選挙の得票率2%以上――という政党要件の両方を満たす7党が出席した。【内田帆ノ佳、富美月】
社民と参政はビデオメッセージ
社民党と参政党はビデオメッセージを寄せた。社民の福島瑞穂党首は「介護保険の立て直し、給食、大学授業料・入学金の無償化を実現する。(沖縄県名護市)辺野古に新基地建設はならない。憲法を守る」と訴えた。参政の神谷宗幣代表は「積極財政と減税で、国民が使えるお金を増やし、経済の力を取り戻す。教育で若い人たちのアイデンティティーを高める」と語った。