カジュアルな普段着だと失礼に当たるような、格式高いパーティや会合では、少し上品で清楚なファッションが求められます。
雅子さまのパンツスタイルに込められた意味とは?
しかし、多くの女性たちはそんな時にどんなコーディネートをしていけばいいのか、つい悩んで時間を費やしてしまう経験を持っているはずです。
そんな機会が巡ってきた時、ぜひ思い出してほしいのが、セミフォーマルなファッションを着こなし、公務に出席される女性皇族方の装いです。
近年、女性皇族方のファッションにも、さまざまな変化が訪れているように思います。
皇后雅子さま―“エレガントでありながらアクティブ”
2023年9月16日、第42回全国豊かな海づくり大会に出席のため釧路空港に到着。©JMPA
それは、パンツスタイルです。
上品なベージュピンクの上下にバッグも色を合わせられ、エレガントな装いの中に、どこかアグレッシブさを漂わせていました。
振り返れば、雅子さまがお出ましになる際、パンツスタイルが割と多いにようにお見受けします。
なぜ雅子さまはパンツスタイルを選んでいらっしゃるのでしょうか?
それは公務の行く先々で、出会った人々と丁寧に交流したいという思いからなのでしょう。また、膝を屈してできるだけ近い距離でお話をされたり、また立ったり座ったり動きの多い場面にも遭遇します。そんな時、パンツスタイルの方が動きやすく、臨機応変に対応できるメリットがあります。
つまり、雅子さまのパンツスタイルは、公務においてできるだけ多くの人々と、少しでも長く触れ合おうとする思いが反映されているのではないかと拝察します。
しかし、雅子さまは機能的なメリットだけを、ファッションに求めているのではありません。
お気持ちが伝わるスカートスタイル
翌日の式典に出席された時には、雅子さまは紺と白のマリンカラーで海をイメージさせるジャケットとスカート、帽子でコーディネートされていました。装いを通して、この大会に関わった人たちに敬意を示そうとされる、雅子さまのお気持ちが伝わってきます。
式典にはスカートスタイル、空港に降り立った時には多くの人と触れ合えるようにパンツスタイルという、TPOに合わせたエレガントなファッションも雅子さまの魅力です。
パンツスタイルには国民に寄り添おうと努力される、雅子さまの誠実な思いがにじみ出ているのではないでしょうか。
その後、眞子さん、佳子さまを出産して母となった頃から、フェミニンでありながら落ち着いた色味のファッションを好まれるようになっていきました。
いわば皇室はこうあるべきというような、派手過ぎず地味すぎない、伝統的な女性皇族の装いを求められていたのだと思います。
美智子さまは公務の意味合いをよく理解され、国際親善の場では、相手国の国旗の色をさりげなく装いの中に取り入れて、敬意を示されていました。
また季節に応じて春は淡いパステルカラーを取り入れたり、秋は紅葉を思わせる味わい深い色合いをお召しになったり、美智子さまの繊細な工夫を凝らしたコーディネートを、紀子さまは意識していらっしゃるように感じます。
佳子さま―“トレンドを取り入れて自由に”
ここ数年の佳子さまの装いは、赤いワンピースが多いと話題になったこともありました。
2023年1月、「聴覚障害児を育てたお母さんをたたえる会」に出席された時も、赤いワンピースに赤いパンプス、イヤリングも同じ赤で、一色で揃えたコーディネートでした。
佳子さまはトレンドのアイテムも公務での装いに取り入れていらっしゃることから、お召しになった洋服は、若い女性たちの間で同じものを身に着けたいと大きな反響があることで知られています。
佳子さまのファッションは、一言で言えば“自由”。女性皇族の定番のスタイルに縛られず、「好きなファッションを身にまといたい」という、年頃の女性なら誰もが思う気持ちを素直に大胆に表して、“革新的”と言えるでしょう。
同世代の女性たちに共感してもらって、皇室への親しみを深めてもらいたいという思いも隠されているのでは……?
愛子さま―“良家のお嬢様スタイル”
白のジャケットと膝下丈のスカート、アクセサリーは女性皇族の定番であるパールのネックレスとイヤリング、そしてブローチを合わせていらっしゃいました。
非の打ちどころがない良家のお嬢様スタイルで、好感度が高く上品なコンサバファッションと言えるでしょう。
女性皇族のファッションマトリックス
雅子さまはエレガントでありながら、割と多く目にするパンツスタイルは、それまでの女性皇族にはあまり見られなかった、イノベイティブ(革新性)を実感させてくれます。
佳子さまは上手にトレンドを取り入れながら、一般の若い女性たちが皇室ファッションに親しみを持つことができるよう、それまでの女性皇族にない、大胆で華やかな装いを好まれているのかもしれません。
愛子さまは、まだファッションに関して情報が少ないものの、今のところ佳子さまとは真逆の保守的な良家のお嬢様スタイル。
まだ成年皇族となって3年目でいらっしゃるので、最初は従来の皇室スタイルに従い、これからチャレンジや工夫を重ねて、ご自分なりのファッションを見つけていかれるのではないでしょうか。
つげのり子(つげ・のりこ)
放送作家、ノンフィクション作家。2001年の愛子内親王殿下ご誕生以来、テレビ東京・BSテレ東で放送中の「皇室の窓」で構成を担当。西武文理大学非常勤講師。日本放送作家協会、日本メディア学会会員。著書に『天皇家250年の血脈』(KADOKAWA)、『素顔の美智子さま』『素顔の雅子さま』『佳子さまの素顔』(河出書房新社)などがある。