「衆院議長に異例のお声がけ」 皇位継承議論の急展開、背景に美智子さまのお気持ちが(2024年6月1日『デイリー新潮』)

典範改正も視野に
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 長らく懸案であった「安定的な皇位継承」のあり方を巡る協議が、ようやく緒についた。今後は、衆参両院議長のもと各党代表による議論が加速するとみられるが、その裏では、延々と待たされてきた当の皇室から、上皇后さまが“ご心中”を密かに発せられていたという。【前後編の前編】
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 皇族数の確保策に関する初めての与野党協議は、5月17日に衆議院議長公邸で開かれていた。
「政府の有識者会議は2022年1月、皇位継承策として『女性皇族が婚姻後も皇室に残る』『旧宮家の男系男子を養子縁組で迎える』の2案を国会に提出しました。ところが議論は一向に進まず、昨年秋には遅まきながら自民党が『安定的な皇位継承の確保に関する懇談会』を立ち上げ、両案について協議を始めました」
 とは、全国紙デスク。
「このうち女性皇族が残る案については、かねて保守派が“女性・女系天皇の容認につながりかねない”と懸念してきましたが、自民党は4月中旬、この2案を『妥当』とする論点整理を確認。公明や日本維新の会、国民民主なども同様に賛成の意を示しています。ただし現行の皇室典範では『天皇及び皇族は、養子をすることができない』『皇族女子は、天皇及び皇族以外の者と婚姻した時は、皇室を離れる』とあるため、典範改正も視野に入れながら議論が続くとみられます」(同)
90%が「女性天皇を認める」に賛成という結果
 折しも4月下旬、共同通信世論調査では90%が「女性天皇を認める」に賛成という結果が示された。また5月19日には、毎日新聞の調査でも賛成が81%に達していたのだが、
有識者会議の報告書は『女性・女系天皇』の検討といった根本的な見直しには言及していません。つまりは皇位継承順位の変更を前提としておらず、今回の議論はあくまで、減少が続いてご公務の担い手不足が懸念される“皇族数の確保”を最優先に進められていくことになります」(同)
 3年前の有識者会議でヒアリングに応じた麗澤大学八木秀次教授は、
「国会に提出された2案は、どちらかを選ぶというのではなく、セットで議論されることが前提です。女性皇族に関する第1案で合意できたからといってそれで終わりにせず、次に第2案、つまり養子縁組の検討が必ずなされてしかるべきです」
 としながら、
「政府案は、これらを恒久化するのが目的です。現在おられる女性皇族方については、ご結婚の際に皇籍を離れられるかどうかを選択していただく。その一方、制度改正後にお生まれになった内親王や女王については、婚姻後も皇族の身分を保っていただくことになるでしょう」
2年もの間、最重要事項を放置
 22年1月に岸田文雄首相から報告書を受け取った当時の細田博之衆院議長は、保守派への配慮もあってひたすら議論を避け続けてきた。そうした不作為が重なって2年もの間、最重要事項が放置されてきたわけだが、昨年10月に就任した額賀福志郎議長は、
〈各党の協議の経緯や状況を把握した上で、立法府としてどうすべきか整理していきたい〉
 と、当初から意欲を見せていたのだった。
「昨年12月19日には議長公邸に与野党幹部を招き、個別に会談。各党の意見集約を促しています。これに先立ち、自民の懇談会を束ねる麻生太郎副総裁とも面談するなど、一連の議論を主導する役割を果たしてきました」(前出デスク)
 その額賀議長は5月17日、
〈今後は週に1回協議を行い、今国会の会期中に取りまとめたい〉
 との意向を示したのだが、
「会期延長がなければ、残された時間はあと1カ月。大まかな論点は整理されているとはいえ、細部では各党間の隔たりが大きい。これまでの遅れを取り戻したいとの思いもあるのでしょうが“さすがに拙速に過ぎるのでは”といった声が各所から出ています」(同)
 額賀議長が“前のめり”になっているのは、上皇后さまからの「重いお言葉」があったからだというが――。後編では、「重いお言葉」の内容について報じている。
週刊新潮」2024年5月30日号 掲載
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