小林製薬、「創業家依存」脱却に疑問符 社長の覚悟見えず、再発防止策でも具体性なし(2024年9月17日『産経新聞』)

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今年3月29日、記者会見する小林製薬小林章浩社長(左から2人目)ら大阪市北区(門井聡撮影)
小林製薬は17日の会見で一連の「紅麹(べにこうじ)」問題に対する再発防止策の一つに「創業家依存経営からの脱却」を掲げた。しかし、その中身は具体性に乏しく、会見での山根聡社長の発言も、本当に創業家と手を切る覚悟があるのか分からないものだった。消費者や社会が納得できる内容とは言いづらく、同社が早期に信頼を回復できるのか不透明だ。
一連の問題を受け、創業家である小林一雅前会長と、長男の小林章浩前社長が引責辞任した。しかし一雅氏に対しては、7月23日付で就いた特別顧問として、3年任期で通常顧問の4倍となる月額200万円を支払う契約を締結。8月8日付で代表権のない取締役となった章浩氏も社内にとどまる意向を示している。
これに関し、山根社長は今回の記者会見で、「今回の発表をもって(一雅、章浩氏の)役職を変える考えはない」と発言。取締役として担当している補償が完了した後の章浩氏の処遇についても、「現段階でまだプランはない」と言及した。
このほか、創業家依存経営からの脱却が永続的か否かを問われた際も「企業価値を高めるために必要なスキルとマインドを持った者がリーダーになることは正しい」とも述べ、将来的に創業家が社長に返り咲く可能性に含みをもたせた。
再発防止策では「多数の役職員が創業家の意向をくんで業務を遂行する傾向にあった」と指摘。「創業家との関係を見直し、同質性を排除して多様性を強化するための施策を行う」とうたったが、かけ声倒れに終わる懸念がぬぐいきれない。(田村慶子)