夫婦が2人目以降の子どもを計画することをためらうなど、理想の数の子どもを断念する人は少なくない。
国立社会保障・人口問題研究所が2021年に行った出生動向基本調査では、夫婦が理想とする子どもの数は平均2・25人であるのに対し、実際に予定している子どもの数は同2・01人だった。
こうしたギャップがある理由は「子育てや教育にお金がかかりすぎる」(52・6%)が最多だが、「心理的、肉体的負担に耐えられない」(23・0%)▽「仕事に差し支える」(15・8%)▽「夫の協力が得られない」(11・5%)▽「自分や夫婦の生活を大切にしたい」(8・2%)――と育児の大変さや個人の生活スタイルを尊重する声も上がる。
共働き世帯が増える中、この調査では、第1子出産前に仕事をしていた女性が、子どもが1歳の時も就業している割合は69・5%に上った。
「働き方が少子化の背景」識者
仕事と子育ての両立をめぐる課題に詳しい法政大の武石恵美子教授(人的資源管理論)は「働き方の問題が、少子化の背景の一つにある」と指摘。育児休業や時短勤務などの制度が整い、出産後の女性が継続就業はできるようになったが、「働ける時間が限られ、仕事のペースが落ちることで賃金が減ったり、評価が下がったり、活躍という視点では能力が発揮できていない問題がある」と話す。
男性の育児休業も拡充するが、長時間労働の慣行は残り、転勤を断ることも難しいため、男性が仕事、女性が仕事と家庭といった性別役割分業もみられる。武石さんは「出産は個人の選択だが、望んだ時に実現できるように、社会や企業に働きかける必要がある」と述べる。【塩路佳子】