野党連携巡り温度差 立憲民主党代表選、17日間の論戦スタート(2024年9月7日『産経新聞』)

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日本記者クラブ主催の討論会で、自身の訴えを書いたボードを手に写真撮影に応じる(左から)野田佳彦枝野幸男泉健太、吉田晴美の各氏=7日午後、東京都千代田区(鴨志田拓海撮影)
 
立憲民主党代表選に立候補した野田佳彦元首相、枝野幸男前代表、泉健太代表、吉田晴美衆院議員は7日、討論会や共同記者会見に臨み、17日間の論戦が始まった。次期衆院選政権交代を目指す考えや政治改革の必要性についてはおおむね見解が一致したが、野党連携の在り方を巡っては微妙な温度差も露見した。
立候補の届け出を終えた4氏は、党本部で共同記者会見を行った後、日本記者クラブでの討論会に参加した。
野田氏は、派閥政治資金パーティー収入不記載事件に伴う自民党への逆風を念頭に「政権を取れる千載一遇のチャンスだ」と指摘し、「経験値を生かして政権交代の先頭に立つ」と主張した。
枝野氏は、野党への期待が高まらない背景を「政権を預けたらどんな社会ができるのかというビジョンが見えないからだ」と分析し、支え合いの仕組みを充実させる「人間中心の経済」の実現を重ねて訴えた。
泉氏は、党勢浮揚に取り組んだ3年間の実績をアピールして「政権を担う決意を語る」と強調した。
吉田氏は、教育を充実させることで経済を活性化し、国民生活の底上げにつなげるという戦略を示した。
立場の違いが垣間見えたのは、他の野党との関係に関する発言だ。
野田氏は、日本維新の会との連携などを念頭に「穏健な保守層まで取りに行くというときに、初めて政権を取れるチャンスがある」と持論を展開したが、枝野氏は「維新とは方向性が違う」と明言した。泉氏も「維新は『立民とやるか自民とやるか』の両にらみの姿勢だ」と述べ、連携には消極的な姿勢を示した。
吉田氏は、政党名は明示せずに「総選挙で(与野党)一対一の構図を作るという意味で、選挙協力は進めるべきだ」と語った。
共産党との関係に関しては、枝野氏が「包括的な連携は難しい」、泉氏が「ともに政権を担うことはできない」と発言した。
代表選に向けては、野田、枝野両氏が8月中に立候補の意向を明らかにしていたのに対し、泉氏と吉田氏は立候補に必要な推薦人20人の確保に苦労し、告示直前まで出馬の環境が整わなかった。
現職ながら厳しい状況での出馬を余儀なくされた泉氏だが、討論会では代表として党再生の先頭に立ってきた自負から、こんな言葉を口にした。
「立派な先輩たちがいる。先輩たちに支えていただいて私が政権を担いたい。いつまでも過去の経験、実績(に頼る党運営)を繰り返していけば、次の世代も伸びてこない」

立憲民主党代表選、党内四分 主導権争い過熱(2024年9月7日『産経新聞』)
 
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野党第一党のトップを選ぶ立憲民主党代表選が7日告示され、野田佳彦元首相(67)、枝野幸男前代表(60)、泉健太代表(50)、吉田晴美衆院議員(52)の4人が名乗りを上げた。各陣営や党内グループは、新代表選出後の主導権争いも視野に23日の投開票に向けた攻防に臨む。
立候補に必要な推薦人20人の確保を巡る駆け引きは告示日の朝まで続いた。
推薦人集めが難航していた吉田氏と江田憲司元代表代行(68)は7日午前、国会内で会談し、両陣営で候補を一本化して吉田氏が出馬することで合意した。話がまとまったのは、立候補の受け付け開始時刻の午前10時をわずかに回ってからだった。
告示日にようやく構図が固まるというあわただしい幕開けとなった代表選は、現時点では、野田、枝野両氏の対決が軸になるという見方がもっぱらだ。
野田氏は、自身のグループ「花斉会」に加え、小沢一郎衆院議員が率いる「一清会」からも支援を取りつけた。中堅・若手グループ「直諫(ちょっかん)の会」の重徳和彦衆院議員ら幹部も野田氏を支える。対する枝野氏は、党内最大グループ「サンクチュアリ」の支援を受ける。
一方、泉氏を支えるのは旧国民民主党系グループ「新政権研究会」だ。同グループは約20人を擁するが、支持を固め切ることができず、推薦人集めは難航した。求心力の低さを露呈したことは、選挙戦でもマイナスに作用しかねない。
吉田氏の推薦人には、江田氏らのほか、花斉会の複数の議員も名を連ねた。ただ、野田氏から離反したというわけではなく、唯一の女性候補である吉田氏の出馬を後押しして、多様な人材が競り合う代表選を演出するという「大局的な見地」(野田氏周辺)からの動きのようだ。
代表選は、最初の投票で過半数を獲得する候補がいなければ決選投票となる。党関係者は「花斉会の動きは、決選投票を見据えた吉田氏陣営への連携呼び掛けではないか」との推測を口にした。(松本学)