茂木敏充氏、自民党総裁選へ出馬表明 防衛増税見送り(2024年9月4日『日本経済新聞』)

 
記者会見で自民党総裁選への出馬を表明する茂木敏充幹事長(4日、東京・赤坂)
自民党茂木敏充幹事長は4日の記者会見で、党総裁選(12日告示ー27日投開票)に立候補すると正式表明した。負担増を避けるために防衛力強化の財源に充てる1兆円規模の増税を見送り、少子化対策に使う公的医療保険料への上乗せも停止すると明言した。

茂木氏が総裁選に出馬するのは初めてだ。「経済再生を実行へ」を掲げ、最優先目標に「成長力と生産性を向上し、一人ひとりの所得、年収をアップさせる」ことを挙げた。「半年以内にデフレ脱却を宣言できる状況にする」と述べた。

物価高対策を意識し「増税ゼロ」の政策を推進すると訴えた。防衛増税などで確保する予定だった最大2兆円ほどの財源は、経済成長に伴う税収増や外国為替資金特別会計の活用で補えると主張した。

国と地方を合わせた基礎的財政収支プライマリーバランス)を2025年度に黒字化する目標は堅持する。

株式の配当や売買にかかる金融所得への課税強化には「正しい方向性と思わない。『貯蓄から投資へ』という流れに逆行する」と語った。

成長分野に人材移動を促すとしつつ、解雇規制の緩和に慎重な考えを示した。「それぞれの人が能力を発揮できる場所に移れる環境をつくることが大切だ」と話し、ハローワークを通じた職業訓練などの充実を優先するとした。

自民党の派閥を巡る政治資金問題に関し「全く新しい自民党をつくっていく覚悟を示し、政治改革と党改革を断行する」と強調した。

政党から議員個人に渡される政策活動費は廃止すると言明した。党派閥の政治資金問題を受け、使途の公開義務がなかった政策活動費に批判が強まっていた。

政治資金パーティー収入を事業収入として課税対象にするための法改正にも触れた。現在、政治団体が寄付やパーティーで集めた政治資金は原則、課税されない。

政治資金収支報告書への不記載があった安倍派議員には「政治活動の中で説明責任をしっかり果たすことが求められる」と指摘した。次期衆院選での公認の是非については「解散が決まってから党の選挙対策本部で厳正に判断する」と述べるにとどめた。

茂木氏は立候補に必要な推薦人20人を確保した。5日に具体的な政策発表を予定する。出馬表明は石破茂元幹事長や河野太郎デジタル相らに続いて5人目。推薦人の基準が現行の20人になった2000年代以降で候補者数が最も多かった08年と12年の5人に並ぶ。

茂木氏は衆院栃木5区選出で当選10回。丸紅で勤務した後に米ハーバード大で学び、米マッキンゼーに入った。1993年衆院選で初当選し、政府で経済産業相や外相、党で幹事長や政調会長を歴任した。

茂木氏は幹事長の権限を5日から岸田文雄首相(自民党総裁)に委嘱する。幹事長としての役割を担いながら総裁選に出馬すれば、党運営に支障が出たり、選挙の公平性を欠くとの指摘が出たりする可能性を考慮した。