台風10号上陸でコメ品薄に追い打ち懸念 農家は稲刈り急ぐも一部品種は被害不可避か(2024年8月27日『産経新聞』)

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台風上陸で収穫前のイネが倒れる懸念も
日本列島に迫る台風10号は、収穫期を迎えたイネへの影響が懸念されている。暴風などの被害が広がれば、全国で問題となっているコメの品薄にも追い打ちをかけかねない。農家は稲刈りを予定より早めて収穫を急ぎ対応を進めるが、受粉を迎える前のイネは野ざらしにするしかなく、一部品種では品質や収量の低下が避けられない状況だ。農林水産省は新米の流通が本格化する9月には品薄解消を見込むが、一部地域ではコメ不足がなお続く可能性もある。
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■「受粉できない品種も」
「徳島の伝統米『徳ばん』などこれから受粉が始まる品種は稲刈りを早めることもできない。台風でイネが倒れてしまうとそれらは受粉ができなくなるため、被害によっては1~3割収量が減る可能性がある」
徳島県阿南市で伝統米を栽培・販売する「なかがわ野菊の里」の新居(にい)義治代表は焦りをみせる。同県内には30日の明け方から朝にかけて最も接近する恐れがあり、新居さんは現在も更新される台風の予想進路図を注視しながら、収穫したコメの配送手配の変更など対応に追われているという。
新居さんは「台風被害に加え、農家の減少や一部の大手農業法人が高額で日本産米を購入する外国向けに輸出を増やす動きもあり、国内のコメ流通量の減少もありえる」と表情を曇らせる。消費者の災害への危機意識も強まっており「一部地域では来年もコメの品薄感が続くのではないか」と予想する。
■例年より1週間早く収穫
27日には、稲作が盛んな兵庫県北部の豊岡市でも稲刈りを急ぐ農業者の姿が目立った。
「昨日から急いで稲刈りを進めていて、今日も3町(約3万平方メートル)分は刈っている」。そう話すのは地元の農家で作る「中谷農事組合法人」の木下義明理事だ。コメの品薄が目立ち始めた夏頃から注文が殺到した結果、在庫が早々に底をついたため、今年は例年より1週間ほど早く稲刈りを本格化させたという。
「稲が倒れて1日間水に漬かると一気にカビが発生し、病気のリスクが高まる」(木下さん)ため、好天の間にコンバインをフル活動させて稲刈りを急ピッチで進める計画だ。
台風10号と同等の規模で上陸した平成30年9月の台風21号による農作物や農業機械、施設などへの被害額は、31道府県で計約354億円に上った。台風10号の予想進路も、日本の南から発達しながら北上し、九州や四国、近畿など西日本を縦断したこの台風21号と似ており、西日本の農業者は特に警戒を強めている。
坂本哲志農林水産相は27日の記者会見で、「台風10号の上陸が予想されており、大雨や暴風による農作物への影響も心配される。気象情報を十分に確認し、作業者の安全確保を最優先に被害防止に向けた対応をお願いしたい」と注意を呼び掛けた。(西村利也)